抄録
本稿の目的は、フレーベルが『母の歌と愛撫の歌』で乳幼児の食体験をどのように描いているのかを、主
に「遊戯の歌」第7編「草刈り」の分析を通して、手と労働の視点から明らかにすることである。フレーベルに
よれば、いくつかの行為や作用が連なり合って「生活の鎖」を形成しているという世界の在りようを感得するた
めには、多くの知識を獲得したり理性的な能力を高めたりするだけでは不十分である。子どもは、労働の身体的
ミメーシスとしての手遊び、あるいはその発展としての作業を通して、自らのいのちを支える「生活の鎖」の存
在に気づき、世界の全体的な成り立ちへの理解を深められるように導かれるべきである。
食にまつわる「生活の鎖」への理解は、現代社会において、ますますその重要性を棯している。そのためには、
手遊びや作業などの身体的な活動を伴った、連続的で全体的な食体験を子どもたちに提供する必要がある。