日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: W101
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ワークショップⅠ
PRLって何?
*守本 典子
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抄録

 PRL:preferred retinal locusは、網膜中心窩の感度が低下したために、その代わりとして視対象を捉えるようになった他の網膜領域を指すが、現在、PRLに対応する日本語はない。このような見方は斜視眼の「偏心固視」と区別して「偏心視」と呼ばれることから、一昨年、当学会用語委員会は、PRLの邦訳として「偏心視領域」を提案したが、この機にPRLの概念を整理するとともに、用語についても再検討する。
 PRLは患者が選択した網膜領域であるが、黄斑疾患など網膜疾患で中心暗点を生じた場合のみならず、視神経疾患などで中心視野が障害された場合にもできる。しかし、PRLがすべての作業に最適とは限らず、複数存在したり、視対象や環境によって変わったりする。また、PRLができていない場合や、すでにあるPRLより良い領域(NRL:novel retinal locus)の存在が推察される場合は、その部での偏心視を訓練することが有用とされている。そして、訓練時、この網膜領域はTRL:trained retinal locusと呼ばれ、同部での偏心視獲得後もPRLと区別されることがある。したがって、「偏心視領域」という言葉をPRLのみに適用するのは不都合と考える。
 さらに、SLO、MP-1などの眼底微小視野検査機器で検出する網膜領域に対し、ゴールドマン視野計など通常の視野検査、アムスラーチャート、時計の文字盤などで偏心視の評価や訓練をする視野側の領域を示す言葉もない。実際には、むしろ後者のような方法で偏心視を促すことが多いため、「偏心視(網膜)領域」に対して「偏心視視野領域」と呼んで区別するのも一案であろう。
 本題のPRLについては、preferred(好んで選ぶ)の意を反映させてNRLやTRLとの混同を避け、また視野の側ではなく網膜側の領域を指すことを明確にした「選好網膜領域」あるいは「選択網膜領域」を、PRLの邦訳として新たに提唱する。
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© 2009 日本ロービジョン学会
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