【目的】視覚障害者の自立支援を目的とした補助視覚装置であるシースルーヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発し、網膜色素変性患者の夜間歩行を支援する機器としての有効性について検討したので報告する。
【方法】対象は、九州大学病院眼科を受診した夜盲のある網膜色素変性患者6名。高感度暗視カメラを装着したHMDを用いて、暗室での装用テストと歩行テストを実施した。それぞれのテストについてアンケートによる主観評価を行い、被験者の不自由度を把握するためにVFQ-25もあわせて実施した。歩行テストでは、障害物を設置したルートを設定し、歩行時間や障害物の回避能力を記録した。
【結果】装用テストのアンケート調査は全6例に実施した。暗所におけるHMDの視覚補助としての有効性に関する質問に対して、「非常に感じる」が1例、「感じる」が2例、「少し感じる」が2例、「あまり感じない」が1例であった。歩行テストは、6例中4例に実施した。装置の使用により、2例で被験者の歩行速度が増加した。また、すべての被検者において、裸眼で確認できなかった障害物を避けて歩行できることが観察された。
【結論】網膜色素変性患者の夜間歩行を支援する機器として、本装置が有効である可能性が示唆された。今後は症例数を増やしながら問題点を整理し、商品化へ向けた開発を進めていく予定である。