【目的】中途視覚障害者が、人生の途中で視機能の障害を知ることにより、自分自身の価値を喪失し、自分は役に立たないと感じてしまう。そこから障害と折り合いをつける過程において、周囲の人々との相互作用により過小評価から抜け出し、心理的な小康状態に至るプロセスを明らかにする。
【方法】眼科クリニックに来院している患者11名(男性5名、女性6名、平均年齢64.2歳)を対象に半構成インタビューを行い、周囲の人との相互作用について聞き取った。分析には修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチを用いた。
【結果及び考察】分析の結果、最終的に31の概念を採用し、7のカテゴリー、5のサブカテゴリーが生成された。中途視覚障害者は≪ぐるぐる回る気持ち≫を出発点にして、大別して2つのプロセスを経験する。第1は、自分への≪過小評価から抜け出し心理的な小康状態に至る≫プロセスである。このプロセスには、他者からの≪関わりによる承認≫を継続して受けることが<心理的な小康状態>に至ることに大きく影響していた。第2は、自分への≪過小評価から抜け出せず、延々と回り続ける≫プロセスである。こちらは、他者からの<関わりによる否認>が主に働いたことにより、<仕方がない>に至る。また、このことは、≪関わりによる承認≫がないために、延々と回り続ける。これらの結果から、重要なのは≪過小評価から抜け出し心理的な小康状態に至る≫ことであり、≪関わりによる承認≫が促進剤となる。しかし、<関わりによる否認>が主に働いた場合、「過小評価」から抜け出せないことが明らかとなった。このことから、人生の途中で障害者になる、という自分自身の価値喪失の危機から抜け出すには、本人のことを理解する≪関わりによる承認≫を続けていくことで、「心理的な小康状態」につながる支援を行うことが必要であるといえる。