日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第10回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: P102
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ポスター第1会場
単眼鏡の等価屈折力と作業距離
*田邉 正明魚里 博
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抄録


【目的】単眼鏡は遠方を見るための補助具であるが、鏡筒を長くすることで近方を見ることができる。しかし、単眼鏡の表示倍率は遠方視をしたときの角倍率で表記されており、近見視の拡大の評価がされていない。そのために近見視の一般的な補助具である拡大鏡の倍率と比較することができない。そこで近見視をしたときの単眼鏡と拡大鏡を同じ基準で評価する方法を明らかにする。

【対象と方法】作業距離が鏡筒に記されており、スケールが示す作業距離に合わせればピントが合うように工夫されているNEITZの単眼鏡PKシリーズを対象とした。拡大鏡の単レンズと比較するために、単眼鏡の接眼レンズと対物レンズの2枚レンズを1枚の薄いレンズと考えたときの等価屈折力、等価屈折力に対応した作業距離、鏡筒の長さの変化率を求める一般式を導出し、等価屈折力、作業距離を記載したスケールを作成した。

【結果】近見視をするために単眼鏡の接眼レンズと対物レンズの焦点距離の合計より鏡筒を長くしたときの等価屈折力は負となり、主面は虚像を生じるように算出された。光路図では正立像が実像で結像されるが、単眼鏡ではプリズムの作用で倒立像として結像した。そこで、実像を生じさせる正の屈折力を持つ主面を定義し、正の等価屈折力(Fe)を求める一般式を導出した。a: 作業距離、F: 対物レンズの屈折力、Fe: 等価屈折力、m: 角倍率とするとFe=mF/(aF-1)となった。つまり作業距離はa=m/Fe+1/Fで求められ、鏡筒は等価屈折力が1D増加すれば1/mF2だけ長くすればよいことが導出されたので、最短の作業距離に対応した等価屈折力から0Dまでのスケールを作成し、単眼鏡に貼り付けた。

【結論】単眼鏡に貼られた等価屈折力と作業距離が記載されたスケールで、必要とされる等価屈折力、作業距離に適した鏡筒の長さに調節可能となり、適切な単眼鏡、拡大鏡を選択できるようになった。

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