日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: O_II_
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O_II_ 症例/地域連携
当事者が開発していく地域の「社会資源」および「医療と福祉の連携」
*杉谷 邦子江口 万祐子鈴木 利根筑田 眞
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抄録

【目的】重複障害(視覚・知的・身体)をもつ患者が突然職場を解雇され、ロービジョン外来において強い再就職の意志を示した。視覚障害が高度となっているうえ家族の援助も受けられず、当初ニーズに応えていくのは非常に困難と思われた。しかし本人の意志を尊重し、関連情報を提供しサポートしていくと、自ら各方面に働きかけ、本人が満足する着地点を見出すという良好な結果を得たので、その要因について検討し報告する。
【症例】50歳男性。開放隅角緑内障。平成14年6月19日当院緑内障外来より視覚的補助具選定依頼でロービジョン外来を受診。初診時所見は視力:右=30cm/mm、左=(0.06)。視野:右は耳側15°付近に小さな島状残存視野、左は求心性狭窄。既往歴として小児麻痺・高血圧・クモ膜下出血。小児麻痺による軽度の知的障害と運動障害があり、保護就労により長年製缶会社に常勤勤務していたが、平成14年10月突然解雇された。再就職を焦っていたが、当初補装具や日常生活用品の手続きとそのための移動も困難な状態であった。しかし、ロービジョン外来にて提供した情報をもとに就労目的で自ら各機関に働きかけを開始。その過程で作られた医療と各機関の連携により、福祉サービスの利用も可能となった。現在家から寮に移り、福祉作業所で訪問指導による歩行訓練や生活訓練を受けながら仕事に従事している。
【結論】危機に直面している患者は、医療や福祉サイド主導で先回りにケアするのではなく、当事者の意欲と選択を尊重したサポートをしていくことで想像以上の力を発揮する。本症例は、開設間もない当院ロービジョン外来に「当事者主体」という大きな方法上の指針をもたらした。また症例が問題解決の過程で開発していった地域の社会資源や医療と福祉の連携は、その後のロービジョン外来の問題解決能力を大きく向上させた。

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© 2005 日本ロービジョン学会
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