日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: O_IV_
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O_IV_ 基礎研究
ロービジョン者の視覚情報処理能力の検討
二重課題を用いた評価の試み
*守本 典子山口 知佐子河本 健一郎和氣 典ニ
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抄録

【目的】ロービジョン者における視覚情報処理能力の課題パフォーマンス特性を検討すること。
【方法】両眼開放下にて、正面中心と視角にして6度相当周辺の領域に平仮名刺激を提示する二重課題実験を行った。中心課題は高速連続提示の最後に出される高輝度刺激の検出であり、周辺課題は環状に提示された12種の平仮名のうち色の異なる1刺激の検出とした。対象は網膜色素変性、糖尿病網膜症と少数の白内障術前患者であり、白内障の術後にも同じ実験を再度行った。
【結果】いずれの疾患においても、視力、色覚と二重課題正答率との間に明かな相関は認められなかった。網膜色素変性では視野と周辺課題正答率との間にも相関は認められなかった。糖尿病網膜症では同等の視力をもつ他疾患の患者より両方の課題で正答率の低いものが多かった。両疾患とも視機能の低い症例では周辺課題が1つも正答できないものが多かった。これは、平仮名を拡大しても、周辺課題の刺激を平仮名から丸に変えて位置を答えるだけにしても、あまり改善しなかった。白内障では同年齢の正常者より周辺課題の正答率が高いものが多く、術後の改善は概して少なかった。
【結論】視覚的二重課題の成績が視機能と明かな相関を示さなかったことは、その遂行に高次の処理能力が関与することを意味していると思われる。これには個人差が大きく、読書能力など経験や訓練と関係する可能性があるので、今後検討したい。この実験系は、視機能が比較的高い症例には対応できるが、視機能が低いものには難易度が高すぎることがわかった。ロービジョン者の視覚情報処理能力の評価では、刺激提示時間の延長、刺激色差の拡大、刺激数の減少など、課題を容易にして適応の拡大を図る予定である。

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© 2005 日本ロービジョン学会
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