日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: O_IV_
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O_IV_ 基礎研究
視覚障害者の認知地図形成能訓練を目指した3次元音響ゲーム様コンテンツの開発
*大内 誠岩谷 幸雄鈴木 陽一棟方 哲弥
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抄録

近年、音響工学を視覚障害者福祉に応用する試みが盛んに行われ、実績を上げている。我々の研究グループでは、これまで頭部運動に動的に追随可能な頭部運動感応型聴覚ディスプレイ装置の開発を行ってきた。この装置は、頭部伝達関数を音源に畳み込んだバイノーラル信号によって任意の位置に音像を提示するシステムである。これを利用することによって一般のステレオ再生装置では得られない高臨場感が得られ、音空間を精密に再現できることから、視覚障害者にとって極めて有益な情報提示装置になる。我々はこれを応用して視覚障害者のreaching能力(音源のある位置に手を伸ばす能力)を訓練するためのゲームコンテンツ「ホイピッピ」を開発し、実際に10日間の訓練を行った結果、reaching能力が向上することが明らかになった。さらに、大域的な仮想音響空間内を仮想的に移動することによって認知地図(脳裏内にある空間イメージ、メンタルマップともいう)の形成訓練ができるコンテンツを開発した。このコンテンツは、3次元位置センサを取り付けたヘッドフォンを装着し、進行方向に体の正面を向けて歩行しながらゴールを目指すものである。歩行は実際に歩くのではなく、手に持ったゲームパッドのボタンを押すことによって仮想的に行われる。プレーヤは、歩行すると「コツコツ」と足音が聞こえる。この音は、床、壁、天井などへの反射についても正確に模擬されるため、今いる部屋や廊下の広さや壁の材質を認識するための訓練にもなる。ルートの途中には動物の鳴き声などのランドマークがあり、コースを記憶する手がかりになる。また、壁に衝突するとゲームパッドが振動する。視覚障害者が実際に歩行訓練に入る前に、この装置を用いて訓練すれば、楽しく、かつ安全に認知地図形成の訓練ができる。本研究では、このコンテンツを用いて、実際に訓練を行った結果について報告する。

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© 2005 日本ロービジョン学会
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