主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
視覚を用いて画面を確認できない視覚障害児・者は画面読み上げソフトを利用することでパソコンの利用が可能である(「音声ユーザ」とする)。音声ユーザは、マウスを利用しないで、主としてキーボードによる入力操作と、画面のテキスト情報を読み上げさせることでパソコンを利用している。視覚を中心に開発されたユーザ・インタフェースの利用は困難である。そのため、一般に利用されている学習教材や操作マニュアルをそのまま利用することは難しい。また、音声ユーザに対するパソコンの指導法や教材・教具は充実しているとは言い難い。そこで、音声ユーザのパソコン導入期の指導に焦点を当て、指導内容・方法の検討や教材・教具の開発を行い、これらの有効性及び課題を明らかにすることを目的として研究を行った。
指導プログラムや3Dの触覚教材を開発する前に、音声ユーザを対象にした実態調査を行い、音声ユーザがパソコンを学習する上で困難を感じた点や、パソコンを学習する上で役立った教材などを調査した。それに基づいた「指導の系列」を検討し系統的なパソコン指導の骨子を作り、指導プログラムと触覚教材を作成に取り掛かった。平素の授業で利用し一定の効果がみられたことから、より客観的な評価を行うために協力者やパソコンボランティアの協力を得て、チェックリストを併用した指導プログラムと3D教材による指導を行った。その結果、指導プログラムと触覚教材を併せた指導により確実に一人で行える項目が増えた。到達度の把握や指導展開がしやすいことなどが、本指導プログラムの有効性として挙げられるが、より適切な教材の検討などが今後の課題である。