日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第6回日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集/第14回視覚障害リハビリテーション研究発表大会
セッションID: S1-6
会議情報

糖尿病網膜症
糖尿病網膜症:疾患の特徴とロービジョンケアの導入
*安藤 伸朗
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録

我が国における視覚障害の原因疾患第一位は、糖尿病網膜症である。欧米では既に20年ほど前に糖尿病網膜症が第一位になり、視覚障害者の保護のための様々な社会保障や援助、社会復帰のためのリハビリテーションに膨大な予算が必要となり、社会問題となった。
糖尿病による視覚障害は、もともとほぼ正常に見えていた人が、成・壮年期に視覚障害に至ってしまう「中途視覚障害」である。生まれつき目が見えない人たちは、それを補う様々な「ワザ」を身につけているし、網膜色素変性と緑内障のようにゆっくり進行するものでは、だんだんと慣れたり、事前に訓練を受けたりすることができる。しかし、糖尿病網膜症では比較的急激に視覚障害に陥ることがあるのが特徴である。働き盛りで、社会的にも中心的で重要な地位を占める年代である40~50歳を過ぎた人が急に見えなくなると、状況の変化に順応することが困難になる。
網膜症は、その症状が自覚されないうちに進行し、自覚症状が現れたときには、すでに失明の危機に頻した状態であることがほとんどである。これを防ぐためには、糖尿病の眼合餅症に関する知識を知る(知らせる)ことが大切である。
網膜症が出てくるまでには、糖尿病になってから数年から10年くらいかかる。血糖コントロールがきちんと行われている人は進行が遅く、重篤な網膜剥離にまで至らずに、中途で安定することも多い。逆に、検診を怠りある程度進んでから発見された場合は、血糖コントロールを良くしても、網膜症がどんどん進行することがある。比較的若い人(40~50歳以下)は進行が速い。
糖尿病網膜症は、単純網膜症・前増殖網膜症・増殖網膜症に分類(Devic)される。治療としては、単純網膜症であれば血糖コントロールが重要である。眼科的には経過観察を行う。前増殖網膜症になると、新生血管の発生を防ぐためにレーザー光凝固術を行う。増殖網膜症まで進行すると硝子体手術が行われる。
眼科臨床医は毎日の診療に忙しく、ロービジョンケアに費やす時間を充分には取れないという現実はあるが、ケアヘの橋渡しも大事な責務である。
今回は、こうしたことを背景に、糖尿病網膜症の疾患の特徴と、ロービジョンケアの導入の意義について述べたい。

著者関連情報
© 2005 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
前の記事 次の記事
feedback
Top