主催: 日本ロービジョン学会, 視覚障害リハビリテーション協会
ようやくわが国でも、ウェプアクセシビリティヘの取り組みが社会的広がりを見せ始めている。ウェプアクセシビリティは、ウェブコンテンツ側の努力と支援技術側の努力の共同作業により実現する。
本報告では、ウェブサイトを閲覧する際に視覚障害者が用いる音声ブラウザが今日どのような支援を提供しているのかを、現在、世界でもっとも高機能のスクリーンリーダであるJAWS for Windows日本語版を例にとって解説する。
合わせて今日支援技術分野のソフトウェア開発がどのような困難をかかえているのか、今後メインストリーム側でどのようなブレイクスルーがあれば、支援技術はさらに大きく飛躍するのかについても論じる。
そのような文脈において、報告者がもっか取り組んでいる次世代音声点字インターネットブラウザの設計コンセプト、開発の現状についても報告したい。
さらに、視覚に障害を持つユーザが支援技術を使いこなし、インターネット社会に自由に参加できるようにするためには、ユーザサポートがかかせない。ユーザサポートにおける当事者参加の重要性についても論じる。
当事者参加の重要性といえば、それはサポート分野にはとどまらない。開発においても当事者のリーダーシップが重要である。視覚障害分野の支援技術開発の歴史を振り返れば、日本でも欧米でも当事者自身が開発において果たしてきた貢献は計り知れない。自分の道具は自分で作るという心意気が彼らを開発へと促してきた。GUIベースのOSが主流になって開発の分野から視覚障害者は姿を消したという見方が示されることがあるが、それはまったくの誤りである。いまもなお多くの視覚障害者が支援技術開発で中心的な役割、重要な役割を担っている。このことを強調して本報告を閉じる。