日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第9回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: PI-05
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MNREAD-JKによる読書評価を活用した視覚的環境の整備
拡大教材文字サイズの選択と視距離の調節
*水谷 みどり伊藤 雅貴小田 浩一
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抄録

【目的】ロービジョンの児童の視覚を活用する意欲を高め、学習効率を上げるためには、見えにくさに応じた拡大教材を提供することが前提となる。また、適した文字サイズ選択のためには、客観的で正確な評価が望ましい。ここでは、MNREAD-JKを用いた読書行動の評価をもとに文字サイズを選択し、さらに、視距離の調節について検討した事例を報告する。 【対象と方法】地域の小学校1年生に在籍し、盲学校教育相談を利用する男児。第一次硝子体過形成違残、視力は両眼で0.1。日常、教材の文字サイズにかかわらず接近視(7cm以下)をする。異なる文字サイズを提示し比較すると、常により大きなサイズを好む。近見で視力を測定した後、MNREAD-JKで読書について評価し、臨界文字サイズを推定した。(結果を本人と保護者へフィードバックした)。臨界文字サイズ付近の大きさで学習に用いる読み教材を作り、文字サイズが適しているかどうかを比較検討した。併せて、視距離の調節行動について、文字サイズと関係が見られるかを検討した。 【結果】視力測定や読書評価の検査から、これまでの教材の文字サイズでは、接近視をしても拡大の効果は充分に得られていないことが分かった。MNREAD-JKの結果、臨界文字サイズは1.3logMAR。30cm視力0.1の値から想定される範囲内であった。臨界文字サイズ付近になるように視距離15cmでの読み教材を提示したところ、視距離をとって読ませることができた。本人の抵抗感はなく、「目を近づけた方が好きだけど、目を離すとちょうどいいところ(距離)がある。目(視野)にたくさん(文字が)入る。」との内観を得た。 【考察】MNREAD-JKによる読書評価は文字サイズを選択するために有効であり、その後の実際の教材作りを容易にした。読みやすい教材の文字サイズについてフィードバックすることは、小1という低年齢での効果的であり、自らのロービジョンに向き合うきっかけとなった。

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© 2008 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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