日本ロービジョン学会学術総会プログラム・抄録集
第9回日本ロービジョン学会学術総会
セッションID: PI-06
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中途視覚障害者の復職事例
50歳代男性(中心暗点)がどのように仕事をしているか
*山田 千佳子堀 康次郎高橋 政代
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抄録

<目的> 視覚障害者の就労や復職を支援するためには、「目が見えにくくても仕事ができる」理解を促すための情報提供が必要であり、具体的な仕事の仕方と職場環境の事例紹介は有用である。本報告では復職し安定就労を継続している男性が「何を使ってどのように仕事をしているか」という具体例を報告する。 <方法> 症例は50歳代男性。ブドウ膜炎で中心暗点(約30度)があり矯正視力は右(0.06)左(0.08)。視力低下後休職したが、日本ライトハウスで7ヶ月の訓練・教育を受け復職。1.パソコンの音声・拡大ソフト、2.拡大読書器・ルーペ、3.携帯電話らくらくホン、4.ICレコーダー、5.プレクストーク、6.職場の理解・協力・改善、7.助成金制度の活用により職務が行えるかを検討した。 <結果> 1.自他の予定を確認、当日・週単位の仕事を把握。社内LANやイントラネットで連絡や事務処理。会議は資料の事前確認、発表時はパワーポイントで資料作成。2.パソコンでは読めない雑誌・新聞、写真、グラフ、絵などを見る。直筆で手紙を書く。3.電話・メール、読書器、スケジューラーとして活用。4.メモ代わり。パソコンの読書ソフトで変換したデータを転送、通勤時などに読書。5.音訳図書CDを聞く。6.会議での「こそあど」言葉禁止。配布資料などポイントに付箋付け、音声対応の電話機設置、食堂の調味料のラベルの色変えなどの協力を得た。7.設備・備品を購入。以上により休職前と比べ職務内容は変化したが安定就労を継続中。 <考察> 視覚障害者の就労には、「できること」と「できないこと」を判断し、自分自身の能力を最大限に活かすことが重要であり、周囲に理解と必要な手助けを求め、工夫や制度の活用など環境を変える対応能力が必要である。また、ロービジョンケアにより「目が見えにくくても、見えなくても仕事ができる」という情報が適宜提供され、早い時期の訓練・教育の開始が復職・就労継続に有効であることが実証された。

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© 2008 日本ロービジョン学会・日本視覚障害リハビリテーション協会
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