日本レーザー医学会誌
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特集「循環器疾患におけるレーザー治療」
レーザーによる新しい血管吻合法に関する基礎的並びに臨床的研究の動向
岡田 昌義
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2008 年 29 巻 1 号 p. 50-56

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抄録
近年,レーザーの医学への応用には目覚しいものがある.しかし,その大半は,一般外科,耳鼻科,産婦人科,皮膚科領域での応用であり,心臓血管外科領域への応用は,まれである.最近,このような状況の中で,心臓血管外科領域の中で最小血管の吻合を如何に容易に実施し,かつその長期の開存性を得ることができるかに注目が寄せられている.血管吻合においては多くの縫合糸を使用するが,著者らはこの縫合糸をできるだけ少なくするのが得策ではないかと考え,低出力CO2レーザーの応用に着目し,本研究を開始した.まず第一に,血管吻合の至適条件を検討すべくレーザー出力や照射時間を可変させて組織への影響を観察した.その結果,CO2レーザーの出力は20-40mW,照射時間は6-12sec/mmが血管吻合の最も良い条件となった.この条件の下に成犬を使用して血管吻合を実践し,心拍動下に冠動脈バイパス術をも実施することができた.
一方,吻合部の耐圧試験では,300mmHgまで耐応しうること,また引っ張り試験でも縫合糸との吻合部との間に大きな差異のないことが確認され,臨床応用への足がかりが得られた.このような基礎的研究から臨床応用への可能性が得られたが,その後臨床例にも応用され,理想的な結果が得られたのである.
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© 2008 特定非営利活動法人 日本レーザー医学会
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