早期肺がんにおける光線力学的治療法(Photodynamic therapy: PDT)は機能温存性に優れた, 侵襲の少ない治療法としてすでに確立されている. 我々は難治性固形がんの1つである悪性胸膜中皮腫に対する新たな治療戦略として第2世代光感受性物質であるLaserphyrin
®と安価で様々な形態にあわせて使用可能である発光ダイオード(LED)によるPDTを開発することを目的として基礎的検討を行った. 照射可能なデバイスとしてLEDを羅列した光源を試作し, 接触型照射方法を考案して, 従来の半導体レーザーとLaserphyrin
®によるPDTの抗腫瘍効果と比較検討した.
まず悪性胸膜中皮腫細胞に対する
in vitroにおけるPDT感受性試験では, 細胞株間で感受性の差は認められず, レーザー, LEDともにLaserphyrin
®濃度依存性に強い殺細胞効果を示した.このことは薬物療法の奏効率が低い悪性胸膜中皮腫に対する集学的治療法の1つとして, PDTの臨床的有用性を示唆している. 次にヌードマウスを用いてMSTO-211Hの移植腫瘍を作成し, PDTを施行することにより,
in vivoにおけるレーザー, LEDの抗腫瘍効果について検討した. 照射条件は半導体レーザーでは出力100mW/cm
2, 照射線量100 J/cm
2とした. 一方, 接触型LED照射では20 mW/cm
2, 照射線量100 J /cm
2となるようPDTを施行した. その結果, 低出力・長時間の接触型LED照射群では半導体レーザー照射群と同程度の抗腫瘍効果を認めた.
以上の結果より, LEDによるPDTは
in vitro,
in vivoともに強い抗腫瘍効果を示し, 低コスト, 簡便性に優れるLEDの接触型照射方法を使用したPDTの悪性胸膜中皮腫に対する臨床的応用の可能性を示唆するものと考えられる.
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