日本レーザー医学会誌
Online ISSN : 1881-1639
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29 巻, 1 号
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原著
  • 久保田 光博, 筒井 英光, 山田 雅恵, 今井 健太郎, 角田 佳彦, 前原 幸夫, 大谷 圭志, 井上 達哉, 平田 剛史, 一ノ瀬 修 ...
    2008 年 29 巻 1 号 p. 5-11
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    甲状腺微小癌に対する低侵襲治療としての経皮的組織内レーザー照射法の臨床応用の可能性を検討するために,摘出ヒト甲状腺および実験動物(ブタ)の甲状腺を材料に基礎実験を行った.830 nmの光を発振するダイオードレーザーを使用し,穿刺針を介して甲状腺組織内にファイバーを導入して組織内照射を行った.出力と照射量の変化による甲状腺の組織学的変化を検討するとともに,甲状腺組織内および表面温度の経時的変化を測定することにより,甲状腺隣接臓器への影響を検討し,甲状腺結節に対する至適レーザー照射条件を明らかにすることを目的とした.
    ヒト摘出甲状腺に対する組織内レーザー照射実験では,平均壊死直径の最大径は1.7mm(先端部出力5W,照射量1500J)までに留まった.照射条件と形成される壊死径に相関関係は認めなかった.組織内温度は49℃まで上昇したが,甲状腺表面温度はいずれの出力でも変化を認めなかった.
    ブタ甲状腺に対する組織内レーザー照射においては,出力2Wでは照射条件の変化と形成される壊死径に相関関係は認めなかった.一方,3W,5Wの出力では,照射量の増加に従って壊死の大きさは増大した.同じ照射量では,5Wと比較し,3Wでは大きな壊死を形成した(p<0.05).一方,照射時間を一定とすると,出力の違いによる壊死の大きさに有意差はなかった.平均壊死直径の最大値は12.3mm(先端部出力3W,照射量1500J)であった.甲状腺組織内温度はレーザー照射点から5mm(壊死に陥る点),10mm(壊死の境界点),15mm(壊死を来さない点)の部位で測定した.最高温度はいずれも照射開始後300秒で到達し,出力3Wでは順に160℃,80℃,54℃(照射開始時35℃),出力5Wでは154℃,64℃,46℃(照射開始時38℃)であり,3Wの方が高い組織内温度を示した.マクロ所見では壊死はファイバー先端部より紡錘形に形成され,出力3Wと比較し,5Wではファイバー先端部周囲組織の炭化が著明であった.サーモグラフィで計測した甲状腺表面の最高温度は,3Wの照射では38℃,5Wの照射では55℃まで上昇した.
    ファイバー先端部出力3Wにてブタ正常甲状腺実質内で約300秒のレーザー照射を行うことにより,甲状腺組織の炭化や表面温度の上昇を生じることなく径1cmの壊死を形成することが可能であった.甲状腺微小癌に対して,経皮的に穿刺針を介して組織内レーザー照射を行う本治療法は,ポータブルであるダイオードレーザーを使用することにより,外来でも施行可能な低侵襲治療法となる可能性が示唆された.
  • 今井 健太郎, 臼田 実男, 一ノ瀬 修二, 石角 太一郎, 平田 剛史, 井上 達哉, 大谷 圭志, 前原 幸夫, 久保田 光博, 角田 ...
    2008 年 29 巻 1 号 p. 12-17
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    早期肺がんにおける光線力学的治療法(Photodynamic therapy: PDT)は機能温存性に優れた, 侵襲の少ない治療法としてすでに確立されている. 我々は難治性固形がんの1つである悪性胸膜中皮腫に対する新たな治療戦略として第2世代光感受性物質であるLaserphyrin®と安価で様々な形態にあわせて使用可能である発光ダイオード(LED)によるPDTを開発することを目的として基礎的検討を行った. 照射可能なデバイスとしてLEDを羅列した光源を試作し, 接触型照射方法を考案して, 従来の半導体レーザーとLaserphyrin®によるPDTの抗腫瘍効果と比較検討した.
    まず悪性胸膜中皮腫細胞に対するin vitroにおけるPDT感受性試験では, 細胞株間で感受性の差は認められず, レーザー, LEDともにLaserphyrin®濃度依存性に強い殺細胞効果を示した.このことは薬物療法の奏効率が低い悪性胸膜中皮腫に対する集学的治療法の1つとして, PDTの臨床的有用性を示唆している. 次にヌードマウスを用いてMSTO-211Hの移植腫瘍を作成し, PDTを施行することにより, in vivoにおけるレーザー, LEDの抗腫瘍効果について検討した. 照射条件は半導体レーザーでは出力100mW/cm2, 照射線量100 J/cm2とした. 一方, 接触型LED照射では20 mW/cm2, 照射線量100 J /cm2となるようPDTを施行した. その結果, 低出力・長時間の接触型LED照射群では半導体レーザー照射群と同程度の抗腫瘍効果を認めた.
    以上の結果より, LEDによるPDTはin vitro, in vivoともに強い抗腫瘍効果を示し, 低コスト, 簡便性に優れるLEDの接触型照射方法を使用したPDTの悪性胸膜中皮腫に対する臨床的応用の可能性を示唆するものと考えられる.
  • 久保 富洋, 米津 貴久, 長尾 明典, 蛭子 法子, 木暮 信一, 松田 芳樹, 小松 光昭, 石井 良夫, 渡辺 一弘
    2008 年 29 巻 1 号 p. 18-25
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    近年,低出力レーザーを用いた治療やその研究に対して大きな注目が寄せられている.おもに神経や筋,皮膚組織が対象とされ,その効果として鎮痛や再生・修復の促進というポジティブな報告がされている.しかし,多数の実験報告や臨床報告はあるものの,その作用機序や効果の最適条件については未だに不明な点が多い.われわれはアフリカツメガエル(♂)の坐骨神経-腓腹筋標本を用いて,その筋収縮への低出力レーザー照射(Nd:YVO4, 532 nm, 100 mW)には振幅の減衰を遅延させる効果があることを報告した.そこで今回は測定した筋の単収縮曲線を(1)潜時,(2)収縮期の長さ,(3)弛緩期の長さの三つの観点から波形解析し,低出力レーザー照射効果が筋収縮のどの部分に強く現れるのかを検討した.実験にはアフリカツメガエルの坐骨神経-腓腹筋標本を用いた.坐骨神経を極大刺激強度(1 ms pulse, 1Hz)で刺激し,誘発される腓腹筋の収縮を張力トランスデューサーを通して記録した.1匹の個体から取り出した2つの標本を用いて,10分間の連続刺激を同時に行い,一方をレーザー照射を加えた実験群とし,他方を非照射群とした.その結果,収縮期の変化において両群には有意差が観測され(p<0.05),照射群の方が収縮期の延長を遅延させる傾向を示した.また,2分間ずつの連続刺激と休止を2回繰り返し,休止期間にレーザー照射を行った実験では,潜時・収縮期・弛緩期すべてにおいて,照射群の方がそれらの延長を有意に遅延させた(p<0.05 or 0.01).以上の結果から,低出力レーザー照射には神経筋標本の興奮収縮連関に対する効果があること,その効果は神経筋接合部の化学伝達への作用というよりも筋収縮機構や筋線維内のATP産生・消費機構への作用が強いことが示唆された.
  • 永田 育子, 杉本 庸, 橋川 和信, 寺師 浩人, 杉山 大典, 熊谷 俊一, 田原 真也
    2008 年 29 巻 1 号 p. 26-29
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    真皮メラノサイトーシスに対しては,selective photothermolysisの理論に基づき開発されたQスイッチレーザー照射が有効な治療法である.しかし,いったん合併症を起こしてしまうと対処に苦慮することが少なくない.
    今回,平成12年7月より平成18年6月までに神戸大学医学部附属病院形成外科にて,レーザーを照射した異所性蒙古斑42例53部位を対象に,どのような因子が影響して色素脱失を生じているかについて調べ統計学的な解析を加えた.年齢・性別・部位・レーザーの種類・最大照射エネルギー・照射回数と色素脱失との関連について,ロジスティック回帰による多変量解析を行った.色素脱失は24部位(45.3%)に認められた.体幹は四肢と比べて色素脱失を起こしやすい(オッズ比16.257[95%信頼区間2.367-111.660],P=0.005)という結果が得られた.年齢・性別・レーザーの種類・照射エネルギー・照射回数は有意な因子とならなかった.今回の検討で得られた結果は極めて興味深いものであり,多方面から検証していく必要がある.
症例報告
特集「循環器疾患におけるレーザー治療」
  • 岡田 昌義
    2008 年 29 巻 1 号 p. 34
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
  • 東丸 貴信
    2008 年 29 巻 1 号 p. 35-38
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の冠インターベンション治療(PCI)にExcimer(エキシマ)レ-ザ-冠動脈形成術(ELCA)が試みられており,レ-ザ-による動脈硬化巣や血栓の蒸散・破壊により,急性冠症候群やステント内再狭窄の治療における有用性が証明されつつある.しかし,バルーンPCIと同等の効果との報告もある.原理的にはELCAにより病変組織のより完全な除去が可能なので,症例や病変の選択およびカテ-テルデバイスの改良などにより将来のレ-ザ-PCIの道が開ける事を期待される.
  • 中村 文隆
    2008 年 29 巻 1 号 p. 39-43
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    虚血性心疾患の治療法として古典的なバルーンカテーテルやステントを用いた冠インターベンション(PCI)は確立したものである.しかし,依然として血栓を含んだ病変,高度石灰化病変,慢性完全閉塞病変などの複雑病変に対する初期成功率が低いことが問題である.パルスレーザー冠動脈形成術は複雑病変に対して従来のデバイスに比し有力であるが,作用が強力な分,冠動脈解離や穿孔などの合併症の頻度も高率になっている.その反面レーザー単独では十分な内腔が得られずに追加治療が必要とすることが多いのも事実で合併症を減らしつつ,より強力に蒸散を行うという二つの矛盾した目標をいかに達成するかが現時点での課題である.
  • 岡田 昌義
    2008 年 29 巻 1 号 p. 44-49
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    現在,虚血性心疾患に関しては,内科的に経皮的血管内治療法(Percutaneous coronary intervention, PCI)という治療法でかなりの成果を挙げている.しかしこれらの治療法や冠動脈バイパス手術によっても,冠動脈が全体的に狭小化してこれらの治療が実施できない末期的虚血性心疾患に関しては,もはや従来存在する治療法では何もできないという理由から,見放されていたのである.そこで著者らは,このような末期的虚血的心疾患に対する最終的な治療法として,レーザーを使用して心筋内に血管を新たに作成する手段を考案した.その結果,心筋内血管形成術が遠隔期においても開存して有効である事実を確認し,臨床例に応用した.レーザーとしては,数あるレーザーの中で心筋に対して侵襲の少ないという理由からCO2レーザーを使用した.
  • 岡田 昌義
    2008 年 29 巻 1 号 p. 50-56
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    近年,レーザーの医学への応用には目覚しいものがある.しかし,その大半は,一般外科,耳鼻科,産婦人科,皮膚科領域での応用であり,心臓血管外科領域への応用は,まれである.最近,このような状況の中で,心臓血管外科領域の中で最小血管の吻合を如何に容易に実施し,かつその長期の開存性を得ることができるかに注目が寄せられている.血管吻合においては多くの縫合糸を使用するが,著者らはこの縫合糸をできるだけ少なくするのが得策ではないかと考え,低出力CO2レーザーの応用に着目し,本研究を開始した.まず第一に,血管吻合の至適条件を検討すべくレーザー出力や照射時間を可変させて組織への影響を観察した.その結果,CO2レーザーの出力は20-40mW,照射時間は6-12sec/mmが血管吻合の最も良い条件となった.この条件の下に成犬を使用して血管吻合を実践し,心拍動下に冠動脈バイパス術をも実施することができた.
    一方,吻合部の耐圧試験では,300mmHgまで耐応しうること,また引っ張り試験でも縫合糸との吻合部との間に大きな差異のないことが確認され,臨床応用への足がかりが得られた.このような基礎的研究から臨床応用への可能性が得られたが,その後臨床例にも応用され,理想的な結果が得られたのである.
  • 竹川 鉦一
    2008 年 29 巻 1 号 p. 57-68
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    経皮的レーザー血管形成術の基礎的研究,臨床報告,自験例の結果を踏まえて,この治療法の効果を検証し,将来について考察を加えた.
    レーザーが動脈硬化病変蒸散に有効であるものの,その使用方法が微妙であり,技術を要するため,最近はステント治療に優位性の軍配が上がりつつある.しかしステントにも再狭窄の問題がある.またステントでは人体に対する異物挿入があり,レーザー血管形成術においては異物挿入が無く,かつ自己の血管を再生させる点で両者に違いがある.
    2004年から2007年にかけて下肢切断の危険性が高い重症下肢虚血の症例におけるレーザー血管形成術の重要性を見直した論文が多く見られるようになった.動脈完全閉塞例の先導孔の作成および血栓除去におけるレーザー応用の意義は極めて高いと言える.また2007年に発表された,エキシマレーザーカテーテルとシースをセットにした改良により,従来よりも大きなルーメンの作成に成功した報告を紹介した.
    レーザー血管形成術は症例を良く選択すれば,技術と努力を要するが,閉塞性動脈疾患の一治療法となることを紹介した.この点において,適応症は減少してきているが,レーザー血管形成術の将来はあると考える.
    閉塞性動脈疾患の治療には血栓溶解療法,血栓吸引療法の併用の重要性についても言及した.
  • 岡田 昌義
    2008 年 29 巻 1 号 p. 69-73
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    最近,血管外科領域においても低侵襲性治療への機運が高まってきている.その中には,バルーン,アテレクトミー,レーザー,ステント療法など,実に多くの治療法が台頭するようになってきたからである.このような中で,著者らは早くからレーザーを使用する手段を応用して,とくに四肢の末梢動脈硬化に対して種々の検討を加えて良好な結果をえたので,最終的には外科的手術が必要とされた臨床例にも応用することができ,その良好な成果がえられた.レーザーとしては,アルゴンレーザーを使用したが,最適の出力は金属チップを使用した場合,出力6W,照射時間3secが,一方,レーザーファイバーの先端温度がコントロールできるものであればその温度は200℃で,照射時間は5secを1回照射として応用するのが良好であった.なお,この際,高度な病変に対しては,反復照射を行うことが必要であった.
  • 小川 智弘, 星野 俊一
    2008 年 29 巻 1 号 p. 74-78
    発行日: 2008/04/15
    公開日: 2009/05/21
    ジャーナル フリー
    伏在静脈に逆流を伴う一次性下肢静脈瘤は下肢のだるさ,痛み,腫脹,潰瘍を呈しするため臨床的に重要である.本疾患に対する治療は従来より伏在静脈逆流を取り除く静脈高位結紮術や静脈抜去術が行われている.しかし,最近では,低侵襲的に血管内からレーザー照射により静脈逆流をなくす治療が行われるようになってきた.外科的治療との比較でレーザー静脈内焼灼術の最大の特徴は傷がないことと局所麻酔下で行えることである.本治療の成功率は静脈閉塞率であるが,90%以上と良好で,重大な合併症はほとんどない.それゆえ,本治療は下肢静脈瘤治療の大きな柱となりつつある.静脈内焼灼術の歴史は浅く,現在,異なった波長のレーザーが静脈瘤治療に応用されている.今後,さらに発展したレーザーの開発や遠隔成績の報告が期待される.
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