抄録
椎間板性腰痛は,椎間板の変性や外側線維輪の破綻が椎間板の難治性の炎症,マトリックスのダメージを招き,線維輪の侵害受容器の感受性を増加させることによって生じると考えられている.補助的診断法も確立されておらず,その診断と治療はいまだ難しいとされている.椎間板に対するレーザー照射は,もっぱら椎間板ヘルニアに対して行われているが,椎間板ヘルニアという疾患概念に椎間板性腰痛も含まれて解釈されることもあり,混乱の一因となっている.本来病態の異なる椎間板ヘルニアと椎間板性腰痛を分けて評価することは治療法を検討する際重要であり,我が国の椎間板レーザー治療ではこの混乱がレーザー治療に対する信頼を向上させない一因ともなっているのではないかと推察される.本研究では,椎間板性腰痛に対するレーザー照射の効果につき検討した.対象は,31~71才(平均51.4才)の11名.症状と椎間板ブロックに基づいて診断し,また罹患椎間板を決定した.波長805nmの半導体レーザーを用いて,罹患椎間板に経皮的にレーザー照射を施行した(610-960J,平均740±2.51J).術後2年にわたりOswestry Disability Index(ODI)とVisual Analog Pain Index(VAPI)で評価した.ODIは術前50.3±9.4.術後1日,3,6,12,18,24カ月でそれぞれ18.6±11.2,13.6±4.5,12.5±5.5,11.8±5.3,10.5±2.3,10.5±2.3 であった.VAPIは平均7.6±1.2であった. 術後1日,3,6,12,18,24ヶ月のVAPIスコアはそれぞれ,3.1±2.4,2.4±0.9,2.7±1.2,2.1±0.7,2.1±0.8,2.1±0.9であった.術後2年にわたり,統計学的有意差を持って改善を認めた.椎間板ヘルニアに対するレーザー照射の効果は椎間板内圧の減少に依拠すると考えられているが,椎間板性腰痛の発症原因は椎間板の炎症や侵害受容器の発達であることから,その効果発現機序はレーザーによる起炎物質の減少や侵害受容器への遮断効果が考えられる.