2011 年 32 巻 2 号 p. 143-148
悪性グリオーマ手術における5アミノレブリン酸(5-ALA)光線力学診断は,腫瘍摘出率の向上だけでなく予後の改善効果をも証明されるに至り,その有用性は揺るぎないものとなった.しかし,診断方法としての問題点も残されている.第一の問題点は,蛍光強度の評価方法が肉眼による主観的評価でありことに加え,観察条件に影響を受けやすいなどの多くのpit fallがあり,診断結果が一定しない可能性がある.これは,診断法としては大問題である.本稿では,これを回避するための蛍光強度の定量化手法について概説し,我々の開発した蛍光輝度測定システムについて紹介する.第二に,ポルフィリン蛍光が,どうして腫瘍選択的であるのかが未解明なままである.5-ALA光線力学診断については,5-ALAを投与すると腫瘍のみが光るという現象論でしか理解できていないのである.本稿では,分子生物学的に,ポルフィリン合成に関わる酵素やトランスポーターのうちで何が鍵となっているのかを我々の最新の知見を含めて概説する.