日本レーザー医学会誌
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食道癌に対するPDT
「食道癌に対するPDT」の特集によせて
武藤 学
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2019 年 40 巻 1 号 p. 56

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わが国における食道癌に対する標準治療は,術前化学療法+外科切除であるが,化学放射線療法(Chemoradio Therapy: CRT)は,臓器および機能温存が可能な非外科的治療であり,選択肢の一つとして重要である.CRTは,高い奏効率が得られる一方,局所の遺残・再発率が約40%にのぼるため,救済治療が予後改善にとって重要である.食道癌CRT後の救済治療として,一般に外科手術が行われるが,術後の合併症の頻度が高く,治療関連死が10–15%に及ぶとも報告され,根治的かつ低侵襲な救済治療の開発が急務であった.医師主導治験によるCRTまたは放射線療法(Radiation Therapy: RT)後の局所遺残再発食道癌に対する光線力学的療法(Photodynamic Therapy: PDT)の開発が行われ,主要評価項目である局所の完全奏効割合が88.5%と極めて高い有効性を示したことより,2015年5月にタラポルフィンナトリウム(レザフィリン)および半導体レーザ(PDレーザ)が薬事承認・保険収載された.これは,世界でも初めての成果であり,わが国が誇る最新技術とも言える.

実臨床でCRTまたはRTの局所遺残再発食道癌に対するPDTを実施するためには,日本光線力学学会が主催する講習会受講が必須とされ,2018年4月現在で全国118施設326名の医師が受講済みで,25の医療機関に機器が導入されている.このように,CRTまたはRTの局所遺残再発食道癌に対するPDTは全国に広がりつつあり,低侵襲な治療で根治が期待できる症例が増えている.

本特集では,「薬事承認後の実臨床における臨床成績」「PDT特有の日光過敏症対策」「光線過敏症モニタリング法の開発」「再PDTの有効性」「食道癌に対するPDTの患者管理」を特集として取りあげ,実臨床に有益な情報となることを期待している.

 
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