2021 年 41 巻 4 号 p. 329-335
光線力学的療法(Photodynamic therapy: PDT)の主たる腫瘍殺傷効果は生成された一重項酸素による腫瘍細胞のアポトーシスやネクローシスとされており,その効果はおおむねレーザーの組織深達度に依存している.PDTは既に悪性神経膠腫を含む脳腫瘍に臨床応用されているが,更なる治療効果の向上が望まれる.その向上のために単純にレーザー強度をあげることは周辺正常組織損傷助長の点より現実的でないため,昨今は周辺正常組織損傷を抑えたままPDT効果を高めるための研究が行われている.光感受性物質の腫瘍集積のコントラストを上げることがその主たる解決策であるが,その根幹となる光感受性物質における腫瘍特異的集積現象の機序解明,およびその臨床応用に関する研究は現在も途上にある.このような現行の光感受性物質における腫瘍特異的集積現象の改善の研究に加え,次世代の光感受性物質を用いたPDTに関する基礎的・前臨床的研究,あるいは免疫療法との併用に関する研究も今後の重要なテーマであろう.これらの研究結果を臨床応用することにより,PDTは今後さらに重要な臨床的役割を担っていくことが期待される.