2022 年 43 巻 1 号 p. 13-21
呼吸器領域における光線力学治療(photodynamic therapy: PDT)では狭隘な空間にて適切な光照射が求められる.光照射条件の解析には組織内光伝搬計算機シミュレーションに基づくin silico評価が有効となる.本稿では,末梢型肺癌を対象にして,モンテカルロ法に基づく組織内光伝搬の計算機シミュレーション方法,PDT光照射プローブの性能評価,術前治療評価に向けた臨床画像データに基づく光照射条件評価について,著者らの研究を中心に紹介する.
Photodynamic therapy (PDT) in the respiratory field requires appropriate light irradiation in a confined space. In silico evaluation based on computer simulation of light propagation in tissues is effective for analyzing the light irradiation conditions. Focusing on PDT for peripheral lung cancer, this paper reviews a computer simulation method of light propagation in tissue by a Monte Carlo method, evaluation of PDT light irradiation probes, and pretreatment clinical evaluation of PDT light irradiation conditions using clinical image data.
気管支鏡やナビゲーション技術の高度化によって,呼吸器領域の診断・治療における対象領域へのアクセス性能が向上し,気管・気管支内の観察,気管支鏡検査による診断,気管支鏡下治療が可能になっている1).レーザー治療においては,細径の光ファイバーを用いて効率良く病変領域へレーザー光を輸送することにより,光線力学治療(photodynamic therapy: PDT)が実施されている2,3).PDTは,標的に蓄積させた光増感剤への光照射によって細胞毒性のある活性酸素種を生成させることによって抗腫瘍効果を示す.生成された活性酸素種は,腫瘍細胞の細胞死誘導による直接的な抗腫瘍効果や,バスキュラーシャットダウンや免疫賦活等の間接的な抗腫瘍効果等を誘導するトリガーとなる4).呼吸器領域においては,中心型早期肺癌に対して,光増感剤としてレザフィリンを用いたPDTが保険収載されているだけでなく,中心型の進行肺癌に対して気道を開大するための姑息的治療としても実施されている5).さらには,肺末梢領域の腫瘍治療に関する臨床研究が進められている6).レーザー光をガイドする光ファイバーが細径であることを生かして,経気管支的な光照射が物理的に可能である.このことから,末梢小型肺癌などの従来治療対象とはならなかった症例に対するPDTが期待されている.
光ファイバーによって患部近傍まで光輸送して照射するPDTとしては,光ファイバー先端に設置した光照射プローブを生体組織内に刺入して光照射するinterstitial PDT(iPDT)が提案されている7).これまでに,前立腺癌8),頭頸部腫瘍9),膵臓腫瘍10),脳腫瘍11)等,組織深部に分布する腫瘍や局所的に進行した腫瘍にiPDTが有効であることが示されている.これら研究では,iPDTの治療効果は,腫瘍の位置・形状,組織内の光照射プローブの配置,各光照射エネルギー等の条件から決まる組織内光分布に大きく依存することが示唆されている.呼吸器領域における経気管支的なPDTでは,光照射プローブを腫瘍組織近傍に配置して光照射する点で,iPDTと同様な状況と捉えられる.そのため,組織内の光分布を考慮した光照射プローブの選択や治療条件の設定が重要となる.
PDTにおいて,光照射プローブから射出された光は,生体組織内を散乱吸収しながら伝搬する.PDTによる治療効果のトリガーとなる活性酸素種の生成量は,光フルエンスに依存する12).生体組織内の光分布測定は,ディテクタプローブを組織中に配置するなどして計測できる13).光照射プローブとディテクタプローブの距離を変えて各点での強度を測定することにより,光減衰率等が計測できる.ただし,点計測のため組織内に三次元的に広がる光分布の取得は困難である.また,生体組織の光深達深さ(射出強度が1/eになるまでの組織内距離)が可視光波長領域では,数mm程度であるため,ディテクタプローブ等を施入することによる組織形状の変化が測定に影響すると考えられる.このような実測が困難な対象において,計算機シミュレーションの活用が有効となる.生体組織内の光分布を精度よく計算することは,PDTの光照射条件の定量比較や,プローブ等の医療機器を評価する手法の開発につながる.光吸収・散乱の程度を定量化する指標として,吸収・散乱による光の減衰係数を意味する吸収係数・散乱係数が用いられる.吸収係数や散乱係数は,組織種,個体,波長によって異なる.そのため,PDTの照射波長や照射領域の組織の場所に応じて,組織内の光分布が異なる.光伝搬シミュレーションには,対象の生体組織構造に光照射波長の光学特性値を割り当てた3D組織モデルを構築する.3D組織モデルに対して,光照射のための光源形状や照射方向を設定して,光輸送方程式に基づいて組織内光分布を計算できる.
PDT分野における計算機シミュレーションの活用は現在活発に進められている.前臨床研究・臨床研究における結果に対して,計算機シミュレーションにより求めた組織内光分布と比較することにより,光ドシメトリーの解析が提案されている14).PDT施術後の腫瘍組織切片像からネクローシス領域を解析して,計算機シミュレーションにより得られる光分布と比較することにより,至適な光照射量が示されている.他には,PDT光照射プローブの開発や評価に計算機シミュレーションが活用できる.例えば,頭頸部癌に対するPDTには,少ない照射回数で治療対象領域を光照射するという観点から,光ファイバープローブの性能比較に利用されている15).さらには,カスタマイズ可能な側射型プローブの構成手法が提案されており16),対象に合わせた光照射プローブの開発や選択が可能になる.本邦では,計算機シミュレーション結果がPDT用のレーザ照射装置の製造販売承認審査においても根拠資料として採用されるなど,光伝搬シミュレーションを活用したin silico評価の有効性が認められている.また,PDTにおいて照射位置や照射エネルギー等の光照射に関するパラメータは,組織内の光感受性薬剤や酸素濃度分布等の抗腫瘍効果に関連する他の因子と比較すると,容易に制御できる.そのため,PDT術前の光照射に関する治療計画のための計算機シミュレーションが開発されている.例えば,照射条件の最適化ソフトウェアとして,PDT-SPACE(PDT Source Power Allocation using Convex optimization Engine)が開発されている17).光照射位置と光照射パワーを最適化し,治療に十分かつ正常組織へのダメージを最小化する最適解を提示することができる.強化学習アルゴリズムの導入により,同じ腫瘍範囲を持つ多形性膠芽腫の仮想症例において,腫瘍周辺へのダメージが平均30%低減可能であることが示されており,治療計画技術の有効性が示されている.
呼吸器領域PDTにおいても,計算機シミュレーションは,前臨床研究・臨床研究の定量理解,新規医療機器開発,術前の治療条件の最適化等の臨床アプリケーションのための基礎技術となる.本稿では,呼吸器領域の中でも特に末梢型肺癌に対するPDTに関連して,光伝搬シミュレーション手法,PDT光照射プローブの性能評価,治療計画のための臨床画像データを用いた評価に関する研究を紹介する.
肺組織に限らず,生体組織は屈折率の異なる多様な物質から構成されるため,照射した光の伝搬は組織内で大きく乱される.生体組織内の光伝搬を考えるために,ミー散乱やレイリー散乱に基づくモデルがこれまで広く用いられている.これら散乱理論は,微小球粒子による散乱現象を基に構築される.生体組織を,媒体中に異なる屈折率をもつ微小球が均質に分布した光学的構造として近似する.光は,分布した微小球によって多重散乱して生体内を光伝搬すると捉えられる.このとき,多重散乱によって光のコヒーレンス性が低下して波動性が失われると仮定し,光伝搬を光エネルギー拡散として捉え,輸送方程式によりモデル化する.光輸送方程式では,生体組織の吸収係数・散乱係数を用いる.吸収係数・散乱係数は単位長さあたりの光吸収・光散乱による減衰量を示す,巨視的な物理量である.光輸送方程式の拡散近似解析やモンテカルロ法により,光伝搬を計算できる.肺組織は三次元構造で複雑な光学特性値分布をもつ.そのため,PDT分野においては,組織別の光学特性値を用いた複雑な形状組織分布に対応したモンテカルロ法に基づく光伝搬計算が有効となる18).
モンテカルロ法に基づく光伝搬シミュレーションでは,まず,光を光子のような粒子の集まりと捉える.各光子は,微小球によって散乱され方向を変え,進行中に媒質により吸収されて,組織内を進んでいく.散乱方向は,位相関数に基づいてランダムに決定される.計算機内で膨大な光子の追跡をそれぞれ行い,各点で吸収されたエネルギーから光フルエンスを計算し,光分布を得る.モンテカルロ法による光伝搬シミュレーションのアルゴリズムはこれまで多くの文献で紹介されているため,詳細は省略する.これまで,L. Wangらが開発したオープンソースコードMCxyzが広く使用されている19).最近では,GPUベースの高速なアルゴリズムを実装したMCX20)やFullMonte21)が利用可能になるなど,生体組織内の光伝搬シミュレーション環境が整備されている.PDTの光照射伝搬シミュレーションには,計算対象領域をボクセル化して各ボクセルに光学特性を割り当てるアプローチが主に用いられる.照射光プローブに合わせて光の射出位置を設定して計算する.
光伝搬シミュレーションに必要となる生体組織の吸収係数や散乱係数については,双積分球光学系を用いた測定等によりデータ蓄積が進められている22,23).吸収係数・散乱係数は波長によって異なるため,該当波長での値が必要となる.ヒト組織の場合,光学特性値の測定・解析が不十分なケースが多い.そのような場合は,光学特性値と波長の関係の物理モデルと,報告されている実験値から算出した値が用いられる.本稿で対象とする肺組織については,光学特性値解析の研究蓄積は十分と言えず,PDT波長での散乱係数・吸収係数は算出値を用いている.
散乱係数と波長の関係μs(λ)は,生体組織を微小球粒子群と近似して多重散乱と扱うことを基にして,微小球のサイズ分布とミー散乱に基づいてモデル化される.換算散乱係数μ's(λ)は,等方散乱として見なせるように異方性因子gを用いて,μ's(λ) = (1 − g)μs(λ)を用いて,
と表現できる24).a,bは組織ごと固有の定数であり,文献24)より肺組織における定数はa = 68.4 [mm−1],b = 0.53 (no units)である.肺癌PDTに用いられている光照射波長664 nmとすると,μ's(664) = 2.2 [mm−1]と算出される.吸収係数は,酸化ヘモグロビン,還元ヘモグロビン,水(W)の濃度にのみ依存すると仮定し算出した.吸収係数μa(λ)は,還元ヘモグロビン吸収係数μaHb(λ),酸化ヘモグロビン吸収係数
ここでx,SB,SWは組織ごとに求められるスケーリング因子であり,肺組織における定数はx = 0.85,SB = 0.15,SW = 0.85である26).μaHb(664) = 1.63 [mm−1]26),
肺末梢領域の狭い領域におけるPDT光照射には,ファイバー端からファイバー軸平行方向へ光射出する直射型プローブ(Fig.1(a))と比較すると,ファイバー軸垂直方向へ照射可能な側射型プローブ(Fig.1(b))の方が,照射表面積が大きいことから,腫瘍組織を広範囲に照射できると考えられる.光照射プロファイルなどの実測評価はされているが28),末梢肺がん組織へ照射した際の各プローブの照射性能を比較評価することは困難である.臨床研究による比較評価も有効ではあるが,光照射性能の比較の観点から考えると,PDTの治療効果が光感受性薬剤の組織内分布やその後の間接的抗腫瘍効果に依存するなど,光照射性能以外の要因が大きいため困難となる.そこで,組織内の光伝搬シミュレーションによるin silico評価が有効となる.本章では,開発検討段階の直射型プローブ29)と側射型プローブの評価について紹介する30).

Schematic illustration of light irradiation in PDT for peripheral lung cancer. (a) A direct transmission light irradiation probe and (b) a diffused light irradiation probe in PDT for peripheral lung cancer
直射型・側射型プローブの光伝搬性能を比較するために,直径20 mmの球状の腫瘍組織を仮定し,光照射によって得られる光フルエンス分布を比較した.腫瘍組織の中心を気管支が通過する形状を設定し,光照射プローブはガイドシースによって気管支内腔に配置して光照射を行うと仮定した.気管支は直径2 mmとし,空気層と仮定した.Fig.2(a-d)に光照射プローブと組織の位置関係を示す.直射型プローブでは,ファイバーコアからレーザー光が一様に射出されると仮定し,ファイバーコア径は0.43 mm,ビーム拡がり角は実測値から17.4°とした.側射型プローブは,外径1 mm,射出領域長11 mmの円柱表面から一様になるようにレーザー光が射出される.同一光源での光照射性能を比較するため,直射型プローブ,側射型プローブともに1回の光照射あたり,射出光の全パワー150 mW,照射時間667 sと同じ値に設定した.正常組織と腫瘍組織の光学特性値は,今回の比較では同じと仮定した.直射型プローブ・側射型プローブともに,臨床条件を想定して2回照射とした.直射型プローブでは,腫瘍組織に対して腫瘍中心手前5 mmの地点から1回目照射し(Fig.2(a)),腫瘍手前5 mmの地点から2回目照射(Fig.2(b))した際の光フルエンス分布を計算した.側射型プローブでは,腫瘍組織に対して腫瘍中心後方に1回目照射し(Fig.2(c)),手前にプローブ領域が重ならないよう2回目照射(Fig.2(d))した場合の光フルエンス分布を計算した.Fig.3は,各プローブの光照射による光フルエンス分布のシミュレーション結果を示す.各プローブとも照射光は組織侵入後に減衰する.直射型プローブによる光照射カバー領域と比較すると,側射型プローブの光照射カバー領域が拡大していることがわかる.Fig.4に腫瘍領域内のトータルフルエンスと体積割合を示す.Fig.4(a)より,直射型プローブ照射の方が腫瘍組織内の最大トータルフルエンスは大きいことがわかる.一方Fig.4(b)より,例えば,早期肺癌に対して照射パワー密度として定められている31)トータルフルエンス100 J/cm2以上となる領域は,側射型プローブの方が大きいことがわかる.この結果は,光感受性薬剤の蓄積分布や組織濃度が同じ対象に対しては側射プローブを用いたPDTの方が効率的に腫瘍細胞死を誘導できる,ということを示唆している.

Irradiation conditions with a direct transmission light irradiation probe at (a) the first irradiation and (b) the second irradiation. Irradiation conditions with a diffused light irradiation probe at (c) the first irradiation and (d) the second irradiation

Spatial distribution of total fluence by irradiation (a) with a direct transmission light irradiation probe and (b) with a diffused light irradiation probe

(a) Total energy fluence vs volume ratio. (b) Total energy fluence vs cumulative volume ratio
側射型プローブにおいて,光照射位置の影響を比較するために,直径20 mm球状の腫瘍組織に対して,二回照射する際の,照射プローブ位置の重なり(ΔL)による光分布への影響を評価した.ΔL = −5,−4,−3,−2,−1,0,1,2,3,4,5 mmとした際の光照射分布を比較した.Fig.5には,ΔLと腫瘍組織内の最大フルエンス,平均フルエンス,トータルフルエンスが100 J/cm2以上となる体積割合を示す.腫瘍組織内の最大フルエンスは照射プローブ位置の重なりが大きくなるにつれ大きくなったが,腫瘍組織内平均トータルフルエンス分布,トータルフルエンス100 J/cm2以上となる体積割合に大きな差はなく,照射位置の微量の重なりの変化は光照射領域には影響しないことが分かる.これら結果は,照射プローブ位置の重なりの微量な変化はPDT作用効果に与える影響は光分布の観点から小さいことを示唆している.

Overlap length vs (a) maximum light fluence, (b) averaged light fluence, and (c) >100 J/cm2 volume ratio
光伝搬シミュレーションによる腫瘍領域内のエネルギーフルエンスと体積割合の解析から,側射プローブによる照射の方が腫瘍体積を効率的に光照射できることが示された.光照射プローブによる治療効果の評価は,組織内の光分布の計測困難性やPDT作用が多様な因子によるため,前臨床試験・臨床試験では困難である.光伝搬シミュレーションを用いることにより,異なる光照射条件について光照射の観点から比較評価が可能になる.今後,医療機器開発の場面におけるPDTの治療対象に応じた適切なファイバー設計や,臨床現場における治療計画の際の照射方法の検討において,光伝搬シミュレーションの積極的な活用が期待される.計算機シミュレーションによる医療機器評価32-35)への活用は近年進められている.例えば,近年,FDAが,医療機器の申請に向けた非臨床試験としての計算機シミュレーションのガイダンスを示している36).本邦では,2019年にPDT用照射装置に対してin silico評価の活用に関して,「PDT機器開発ガイドライン2019(手引き)」が示されるなど37),その有効性が認められている.
PDT治療において,個別症例ごとに腫瘍組織の位置や形状が異なるため,光照射位置によって組織内の光分布が異なる.そのため,術前の治療計画や治療効果のモニタリングに向けて,症例ごとの組織形状に応じた光分布をシミュレーションによって把握することが求められる.本章では,臨床データを用いた評価に向けて,医療画像を用いて3D数値モデルを構築して実施した光照射分布シミュレーションを紹介する.
CT画像のオープンデータセット38)を利用して,肺組織の3D数値モデルを構築した.末梢領域に球状の腫瘍を設定した.生体組織の種類により光学特性値が異なるため,部位ごとに固有の光学特性値を割り当てた3D数値モデルを構成する必要がある.そこで,CTスライス画像の輝度情報に基づいて組織を区分した後,各光学特性値を割り当てて,3D数値モデルを構築した(Fig.6(a)).この際,3次元配列のボクセル数をCT画像のピクセル数およびスライス枚数と,ボクセルサイズをCT画像のピクセルサイズおよびスライス間隔と等しくなるよう補完した.臨床画像データから生成した数値モデルに対して,光源位置を設定し,光伝搬計算を行う.本稿では,Fig.6(b-d)に示すように側射型ファイバーを配置した際の光照射分布を比較する.Fig.6(b)は側射型ファイバーを腫瘍組織中心に配置(条件#1),Fig.6(c)は腫瘍組織内領域の側射型ファイバーが半分となる気管支に配置(条件#2),Fig.6(d)は腫瘍組織外の気管支に配置(条件#3)とした.定量比較するために,腫瘍組織と正常組織のフルエンスと体積割合をFig.7に示す.条件#1の場合は効率的に腫瘍組織を照射可能であり,正常組織への照射量を抑制できる.各条件における腫瘍組織,正常組織への光照射量と照射体積を定量比較することができる.術前に様々な条件の光伝搬シミュレーションを実行することにより,組織内の光分布の観点から比較し,適切な光照射条件が決定可能である.

(a) Numerical 3D tissue model of peripheral lung cancer. Positions of light irradiation probe for (b) case #1, (c) case #2, and (d) case #3. Red indicates position of diffused light irradiation probe

Total energy fluence vs volume of (a) tumor tissue and (b) normal tissue
Fig.6では医療画像データを用いた光照射条件の比較例を示した.PDTにおける光照射管理技術には,光照射による治療効果を定量的に表現する手法が必要となる.光と同じ電磁波である放射線を用いる放射線治療では,近傍臓器への影響を最小限にし,なおかつ病変には治療十分な線量を与えるための,照射計画ソフトウェアが開発・承認されている.組織や臓器レベルでの放射線感受性や放射線反応性に関する知見が蓄積されており,腫瘍組織制御線量や正常組織耐容線量のデータが利用可能である.今後,光照射により誘起されるPDTの物理・化学作用を計算機上に再現可能になれば,治療条件に関わる様々な変数に依存する治療結果の定量的な理解につながる.これによって,PDT症例ごとの光照射治療計画などのPDT光照射管理技術が期待できる.今後,薬剤の作用の数理モデル化や薬効指標の定義・解析が必要となる39).これらパラメータ決定・評価には,ヒトでの臨床データを用いた解析が必要不可欠である.単純な腫瘍の形状や照射方法ばかりではない臨床において,今後PDT を普及させ,標準的な治療法としての普及には,患者の臨床画像情報に基づき,照射方法の適切性を施術前に確認できる計算機シミュレーションは有効と考える.
本稿では,末梢型肺癌のPDTの臨床応用に向けたアプローチにおいて,光伝搬シミュレーションの活用事例を報告した.モンテカルロ法に基づく組織内光伝搬の計算機シミュレーション方法によって,PDT光照射プローブの性能評価や術前治療評価に向けた臨床画像データを利用した光照射条件評価手法を示した.光伝搬シミュレーションに基づくin silico評価は,極めて強力な手法を与える.PDT治療効果シミュレーションには生体での妥当性検証などの課題は山積しているが,医療機器評価等における新たな評価手法として将来的に活用されれば迅速な臨床応用につながり,PDTの臨床応用促進に貢献する技術として期待できる.
利益相反なし