日本レーザー医学会誌
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自家蛍光計測によるArFエキシマレーザ照射中の温度測定法の開発
トリプトファン蛍光モデルでの検討
中野 博徳石原 美弥荒井 恒憲佐藤 俊一菊地 眞小原 實
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2000 年 21 巻 4 号 p. 309-317

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抄録
我々はArFエキシマレーザ蒸散による角膜形成 (photorefractive keratectomy) の量的・質的モニターとして, 自家蛍光計測による高速温度測定法を開発した. ArFエキシマレーザ照射による角膜の急激な温度上昇を測定できる高速性を持つ温度測定法を確立するために校正関数を決定した. 実験には蛍光の角膜モデルとしてトリプトファン (tryptophan: 以下Trp) 水溶液を用いた. 蛍光と温度の関係を示す式を蛍光計測結果 (波長360±5nm) に対しフィッティングをした結果, 相関係数が0.99になった. このときのTrp水溶液の熱活性化エネルギー, および頻度因子・輻射速度定数の比をそれぞれ8.9kcal/mol, 及び4.6×106と求めた. これらの値は既報告値と同程度なので, 我々の開発した温度校正法は妥当であると考えられた, フルエンス28~180mJ/cm2の条件のArFエキシマレーザー照射によるTrp水溶液の温度上昇は4~32Kと測定され, 表面温度の計算値と一致した. 本法はサンプリング深さが5nm以下であり, 計測時刻はレーザ照射開始後20nsであった. 本法は, 他の測定法にはない高速性, 非接触性を同時に持ち, ArFエキシマレーザ照射による組織の蒸散量・副作用のモニタリング法として用いることができると考えられる.
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