昭和医学会雑誌
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原著
人工皮膚モデルを用いたマクロファージの創傷治癒過程における動態可視化の試み
塚原 真吾加王 文祥寺瀬 佳苗藤田 幸代保阪 善昭
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2010 年 70 巻 2 号 p. 164-173

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抄録
ヒト皮膚の創傷治癒過程におけるマクロファージの動態を探ること.Bellらの手法に準じて人工皮膚モデル検体を作製した.単球は採取した血液からLIMPHOPLEPTMtube(コスモ・バイオ社)を用いて採取し,検体作製過程で人工皮膚モデル検体に導入した.人工皮膚モデル内での単球のマクロファージへの分化を抗ヒトマクロファージ抗原モノクローナル抗体AM-3Kで免疫組織化学染色を行い確認した.実験群(単球を加えた検体),対照群1(単球を含まない検体)に対してCO2レーザーを照射し人工的な創傷モデルを作製した.また,対照群2(単球を加えたがレーザー照射を行わなかった検体)とも比較した.各群をH-E染色,免疫組織化学染色(MCP-1,HAM56)し組織学的検討を加え定性を行った.HAM56により標識されたマクロファージ数を計測しχ2独立性検定を行い定量した.H-E染色では照射1日目より角化層形成を認め,5日目にほぼ上皮化が完了した.しかし対照群2では5日目でも上皮化は乏しかった.次にHAM56染色では受傷後,活性化マクロファージの数が増え,創傷部のマクロファージだけでなく全体的に活性化していた.MCP-1染色では,照射1日目は角化細胞由来と思われるMCP-1を表皮層内に認め,日数経過でマクロファージ由来と思われるMCP-1を表皮・真皮境界部に認めた.対照群2では,表皮内に認め,境界部には認めなかった.対照群1では全経過においてMCP-1は認められなかった.単球を導入した人工皮膚モデルでは,従来の人工皮膚モデルに比べ上皮化が早い可能性が示された.マクロファージは損傷を受けた付近だけでなく,その周辺全体も活性化し創傷治癒に貢献していることが示され,創傷が存在しなければMCP-1を放出しないことが分かった.マクロファージは,創傷治癒機転において活性化,再活性化を繰り返すことが推察された.また角化細胞およびマクロファージが各々放出したと考えられるMCP-1が創傷治癒に関わっていることが確認されたが,その放出の仕方,時期も異なることから各々創傷治癒において異なる機序を有していることが示唆された.本研究において開発した新しい人工皮膚モデルは,従来の人工皮膚モデルと比較し特に炎症性変化の再現可能性を示しており,より生理的な環境を再現させたと考えられる.
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© 2010 昭和大学学士会
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