昭和医学会雑誌
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原著
ヒト三次元培養皮膚への遺伝子導入法の確立と表皮分化へのCキナーゼの関与
上岡 なぎさ本間 生夫赤羽 智子河野 葉子飯島 正文大場 基
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2010 年 70 巻 3 号 p. 253-262

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抄録
ジーンターゲッティング法等,遺伝子導入・欠失技術は,生体内における特定遺伝子の機能に関して多くの情報を与えてくれる.しかしながら,ヒト組織や個体を対象とした遺伝子改変は,倫理・安全性の面から極めて多くの問題を伴うため,ヒト生体内における遺伝子の役割を明確に証明することは困難である.そこで本研究では,ヒト皮膚三次元培養系に対するアデノウイルスベクターを用いた遺伝子導入法を確立し,皮膚における特定遺伝子の機能を検討した.特に表皮分化への関与が知られるプロテインキナーゼC(protein kinase C,PKC)遺伝子群のドミナントネガティブ変異体(dominant negative mutant,D/N)を導入,その機能を抑制し,複数の分化マーカーの発現を指標として表皮分化に与える影響を検討した.さらに,D/N PKCを過剰発現させた培養ヒトケラチノサイトを浮遊培養することで分化誘導し,三次元培養との異同を比較検討した.表皮に発現するPKCα,δ,ε,η各分子種に対するD/Nアデノウイルスベクターを角層形成直前の三次元培養皮膚に加えることで,高効率且つ持続性の高い遺伝子導入が可能となった.9日間培養を続け,角質層を含む多層化した皮膚構造が構築された後,表皮分化マーカーの免疫組織染色を行った.有棘層・顆粒層に発現するケラチン1は,D/N PKCによって顆粒層での発現が増加した.一方で,顆粒層マーカーロリクリンはD/N PKCαおよびPKCδで発現上昇し,D/N PKCεおよびPKCηでは抑制された.これらの現象は,浮遊培養によるケラチノサイトの分化過程でも確認された.以上のことから,表皮の分化過程においてPKCは,分子種によって共通の,或いは異なる作用を示すことが明らかとなった.今後,皮膚三次元培養にウィルスベクターを適用するこの実験系を利用することで,様々な遺伝子のヒト皮膚における機能解析が可能になるものと考えられる.
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© 2010 昭和大学学士会
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