昭和医学会雑誌
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原著
TSH産生下垂体腺腫における遺伝子解析
中山 禎理佐々木 晶子桑名 亮輔桑島 淳氏阿部 琢巳山本 剛立川 哲彦
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2010 年 70 巻 3 号 p. 245-252

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抄録
ホルモン分泌を伴わない非機能性下垂体腺腫(null cell adenoma)と甲状腺刺激ホルモン(以下TSH)タンパクのみを合成するTSH産生下垂体腺腫の遺伝子を正常下垂体,null cell adenomaと比較検討し,ホルモン分泌や腫瘍形成に関与する遺伝子を検索した.検索腫瘍は当施設において手術により摘出した組織を凍結固定し,連続切片を作成した.切片はLaser Microdissection法を用いて腫瘍細胞だけを採取し,T7増幅法にてRNAを増幅後,DNA microarrayにて解析をおこなった.その結果,腫瘍形成に関与する遺伝子としてMMPと共起する遺伝子TIMP4,細胞周期M期の制御に関わるサイクリンB1,B2などの高い発現がみられた.またTSH産生下垂体腺腫特有の性状である腫瘍硬度を形成する遺伝子として線維性組織の形成に関与するTransthyretin,Fibroblast growth factorが検出された.さらにホルモン分泌に関わるタンパク質CSH1,発生と代謝に関与する転写因子Forkhead box N4などが検出され,TSH産生下垂体腺腫に特有の分化系譜を示唆した.
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© 2010 昭和大学学士会
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