抄録
頭頸部癌に対し,化学放射線同時併用療法(以下CCRT)が広く行われるようになってきている.機能・器官・形態の温存の面から,手術的治療よりも患者のQOLを保つことが出来ると考えられているが,最近では治療後の合併症で日常生活に支障をきたし,必ずしも手術療法より患者のQOLが保たれているとはいいがたい面もある.これまでにわれわれは,CCRTによる治療を受けた患者に治療後の合併症についてアンケート調査を行い,治療後の口渇が患者のQOLを著しく低下させていることを報告している.今回対象を両側の大唾液腺への照射量が36GyのCCRTを行った20例(以下36Gy群)と,放射線単独(以下RT単独)治療を行った照射量が40Gyの15例とした.ガムテストを行った結果,36Gy群では,平均11.2ml,RT単独群では,平均6.0mlであった.検定の結果,36Gy群とRT単独群では唾液分泌量に有意差があるとはいえなかった.今回の検討では,放射線療法に化学療法を追加し同時に治療を行っても,治療後の唾液腺機能に影響を及ぼさない可能性が考えられた.