昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
症例報告
尺骨神経に生じた血腫によるGuyon管症候群の1例
小原 賢司牧内 大輔三原 研一鈴木 一秀西中 直也上原 大志筒井 廣明
著者情報
ジャーナル フリー

2012 年 72 巻 1 号 p. 138-143

詳細
抄録

【目的】Guyon管症候群は1908年にHuntらにより報告された低位尺骨神経麻痺である.今回Guyon管症候群を経験したので文献的な考察を加えて報告する.
【症例】71歳,女性,無職.誘引なく出現した右環指・小指のしびれ,巧緻運動障害を主訴に近医にて内服,鍼治療等をされていた。症状の改善がないため約3週経過時に当院紹介受診.初診時,右還指・小指掌側の感覚鈍麻,鷲手変形,母指内転筋・小指外転筋の萎縮を認めた.またFroment徴候を認め,Guyon管部よりやや近位にtinel徴候を認めた.またJackson testおよびSpurling testは陰性であった.手関節MRIで明らかな異常は認めず,神経伝導速度は導出不能であった.以上よりGuyon管症候群と診断し,発症後約2か月にてGuyon管開放術を施行した.手術所見では,Guyon管より近位の尺骨神経部に暗赤色で10×5mm大の腫瘍を認めた.腫瘍は神経との癒着は少なく,丁寧に剥離をして摘出した.また掌側手根靭帯の切離および神経剥離も行いその他圧迫要素のないことを確認した.術後数日より症状の軽減がみられ術後6か月で鷲手変形は消失し,還指・小指のしびれや巧緻運動障害も改善している.
【結語】Guyo管症候群に対してGuyon管開放術および腫瘍摘出術を行い,良好な症状の改善が見られた.

著者関連情報
© 2012 昭和大学学士会
前の記事
feedback
Top