2018 年 27 巻 4 号 p. 277-280
感染性腹部大動脈瘤(IAAA)は,まれで,予後不良な疾患である.症例は,86歳女性で発熱があり,腹痛と背部痛が出現したため,当院に救急搬送された.血液検査でWBC 12300/mm3, CRP 16.5 mg/dLと高値で抗生剤治療を開始した.造影CTの結果,傍腎動脈および破裂性嚢状IAAAの診断で緊急手術となった.瘤は周囲組織と癒着していた.腎動脈分枝直上の大動脈を遮断し,大動脈内を見ると後壁に4.0×2.0 cmの内膜欠損孔があり膿が貯溜していた.両側の腎動脈にballoon catheterを留置し,冷却した生理食塩水を還流した.大動脈内を洗浄後,内膜欠損孔をウシ心膜パッチにて閉鎖した.大動脈切開部を閉鎖し大網を充填した.術後発熱,背部痛も消失し,CRPも抗生剤投与により陰性化した.術中採取した膿の培養は菌陰性であった.退院後11カ月間経口抗生剤を投与した.術後7年目の現在経過良好である.