昭和医学会雑誌
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原著
Glioblastoma細胞株における放射線照射後のp53とmiRNA発現解析
田中 俊生佐々木 晶子谷岡 大輔野田 昌幸藤島 裕丈中山 禎理小林 裕介宇髙 結子辻 まゆみ小山田 英人
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キーワード: Glioblastoma, p53, miRNA
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2012 年 72 巻 2 号 p. 238-245

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抄録

神経膠芽腫(glioblastoma)は,手術加療だけでは完治が困難な悪性脳腫瘍であり,現在は手術後,放射線療法と化学療法との併用加療が行われている.しかし,治療途中で抗癌剤耐性や放射線耐性を得るために,glioblastomaの根治療法とは なり得ていない.放射線耐性因子のひとつにp53がある.p53はアポトーシス制御に重要な関わりを持つ.細胞に放射線を照射するとDNA障害が起こり,p53が活性化されアポトーシスに関連する標的遺伝子の転写を制御する.しかし,glioblastomaの50%はp53遺伝子の欠損またはp53遺伝子変異が認められるため,転写活性化能が低下し,p53経路アポトーシス誘導機構が働かずアポトーシスへ導かれない.そのため,細胞は放射線感受性が低く,放射線に対し強い抵抗性を示す.アポトーシス誘導は重要な癌抑制機能であり,化学療法,放射線治療など治療感受性に関与している.近年,この遺伝子の転写を制御するmiRNAが報告されている.miRNAは,19~23塩基対からなるsmall RNAで,複数のタンパク質と複合体を形成して標的となるmRNAの3’非翻訳領域(3’UTR)に結合し,遺伝子発現の転写後抑制を行う.本研究では,p53変異型であるT98G神経膠芽腫細胞,p53野生型のA172神経膠芽腫細胞を用いてp53,Bcl-2,Bax,Caspase-9活性値の発現,およびp53アポトーシス経路の遺伝子を制御するmiRNA発現解析を行った.A172細胞のp53発現とmiR-34a,T98G細胞のBcl-2発現とmiR-21が強くp53アポトーシス誘導経路に関与し,放射線治療効果に影響を及ぼすことが示唆された.

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© 2012 昭和大学学士会
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