昭和医学会雑誌
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原著
母体血からの有核赤血球の濃縮と自動解析による同定の効率化
鈴木 稚子本間 生夫関沢 明彦北川 道弘
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2012 年 72 巻 4 号 p. 471-478

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抄録
非侵襲的な出生前遺伝子診断技術として,母体血中の胎児有核赤血球(NRBC)を用いた技術が注目されている.しかしながら,母体血中にはごくわずかな数のNRBCしか循環していないため,どのように効率よく回収・同定するかがこれまでの課題であった.今回,抗CD45抗体磁気ビーズを用いて白血球系の除去をおこなうことで,NRBC同定の効率化を試みた.抗CD45抗体磁気ビーズ処理により全体の細胞数を減少させることによりNRBCが濃縮され,回収・同定の効率化が実現した.さらに,スライドグラスに塗抹された全細胞に占める有核細胞の割合が減少することで,顕微鏡観察においても効率化の効果が得られ,最終的なNRBCの同定数を1.8倍増加させるということが判明した.また,これまでスライドグラスに塗抹された細胞からのNRBC同定は顕微鏡下の目視により行われてきたが,今回,われわれは細胞自動検出機を用いることにより検出の自動化を試みた.その結果,目視で検出する場合と比べ,作業時間の大幅な短縮と作業負担の劇的な軽減に成功した.細胞自動検出機を用いる効果は作業時間,作業負担の減少にとどまらず,最終的に検出されるNRBCの同定数を約3倍に増加させることが確認できた.抗CD45抗体磁気ビーズ処理と細胞自動検出機を併用することにより,NRBC回収・同定の効率化が相乗的に高まるだけでなく,結果としてNRBCの検出・同定効率を高めることにもつながった.このようにして同定したNRBCに対してFISH解析を実施し,実際に性別判定を試みたところ,羊水診断による性別判定で男児と診断された2例については,どちらもXYシグナルをもつ細胞を確認できた.
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© 2012 昭和大学学士会
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