昭和医学会雑誌
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72 巻, 4 号
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特集:呼吸器疾患の診断・治療における低侵襲性手術の現況
図説
原著
  • 白井 崇生, 廣瀬 敬, 村田 泰規, 大木 康成, 楠本 壮二郎, 杉山 智英, 石田 博雄, 中嶌 賢尚, 大西 司, 山岡 利光, 大 ...
    2012 年 72 巻 4 号 p. 446-452
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    進行再発非小細胞肺癌に対するセカンドライン化学療法の有効性を治療薬剤別に比較検討することを目的とした.1998年から2006年までに当院にて,初回化学療法としてプラチナ併用化学療法を施行後,再発した非小細胞肺癌患者253例のうち,セカンドライン化学療法を受けた76例を対象とした.セカンドライン化学療法の治療効果について,ドセタキセル単剤あるいはその併用療法群,ゲフィチニブ群,その他の治療群に分け,奏効率,生存期間,無増悪生存期間を後ろ向きに検討した.患者背景は,年齢中央値63歳(39~80歳),女性24例(31.6%),performance status(PS)0~1が61例(80.3%),組織型は腺癌57例(75.0%),非喫煙者17例(22.4%)であった.セカンドライン化学療法で使用した薬剤は,ドセタキセル単剤あるいはその併用療法51例,ゲフィチニブ15例,その他の治療10例であった.ドセタキセル,ゲフィチニブ,その他の治療の奏効率,生存期間中央値,無増悪生存期間中央値は,6.1%/20%/20%,9.6か月/4.2か月/23か月,2.3か月/2.3か月/1.7か月で,いずれも有意差を認めなかった.患者背景では,PSが再発後の予後と関連した.進行再発非小細胞肺癌に対するセカンドライン化学療法の有効性は,ドセタキセル単剤あるいはその併用療法,ゲフィチニブ,その他の治療薬剤で同等であった.
  • 黒木 知明, 吉本 信也
    2012 年 72 巻 4 号 p. 453-470
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    前外側大腿皮弁は,皮島とともに大腿の筋体を採取する必要がないため,従来多用されてきた様々な筋皮弁に比べ圧倒的に皮島が薄く,採取部の機能的損失も少ない.しかし,皮弁血管茎の解剖学的知見に比べて,挙上手技や皮島デザインなど,臨床に即した知見の集積が十分でなく,本法の普及はいまだ途上である.これに対しわれわれは,皮弁挙上手技を標準化して本法を試みた34例を検討し,皮弁を挙上できる確率,面積や領域,縫縮可能な採取幅,有茎皮弁の到達範囲,皮弁に含めた大腿筋膜の有用性など,臨床上重要な項目を明らかにした.全例で血管茎の画像検索は行わず,皮弁挙上は基本的に筋膜下で行い,肉眼で確認した穿通枝を外側大腿回旋動脈下行枝まで含めて血管茎とした結果,34例中31例(91.2%)で予定どおりに皮弁挙上でき,3例(8.8%)で術式または採取側の変更を要した.最終的に挙上した前外側大腿皮弁の総数は32例(94.1%)であり,このうち26例(81.3%)が遊離皮弁,6例(18.8%)が有茎皮弁で,遊離皮弁1例(3.8%)が全壊死,逆行性有茎皮弁1例が部分壊死した.32皮島に含めた穿通枝総数は65本で,一皮島内の本数は1から4本,平均2.0本であり,外側広筋を貫くものは60本(92.3%),外側広筋と大腿直筋の筋間中隔を走行するものは5本(7.7%)で,ほとんどの症例で皮弁挙上時に筋体内での穿通枝の剥離操作を必要とした.外側大腿回旋動脈下行枝は,34例中4例(11.8%)で欠損したが,4例とも外側広筋栄養枝からの穿通枝を用いて皮弁挙上できた.皮島面積(縦径×横径)は,最大31×22cm,最小2×1.5cmであり,採取部の幅は8cmまで縫縮できた.1本の穿通枝で生着した最大皮島は31×22cmで,その領域は,上前腸骨棘から膝蓋骨上縁までの大腿外側半周に及んだ.皮弁に含めた大腿筋膜は,腹膜や硬膜,腱の再建などに有用で,筋膜上に植皮して非常に薄い皮島にすることもできた.血管柄は長く,皮島を大きくすれば,有茎皮弁として下腹部や陰部,膝だけでなく,背側の仙骨,臀部までを再建できた.以上より本皮弁は,血管茎の解剖学的変異にかかわらず,安定して採取でき,単一の穿通枝でも巨大な皮島を栄養しうることが示された.多くの場合,筋体内での穿通枝の剥離操作を強いられるが,術式の標準化により手術時間は短縮できる.皮島の血行は良好で,状況に応じて皮弁形状を様々に形成でき,皮弁に含めた大腿筋膜の利用は,本法の有用性を更に拡大すると考える.
  • 鈴木 稚子, 本間 生夫, 関沢 明彦, 北川 道弘
    2012 年 72 巻 4 号 p. 471-478
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    非侵襲的な出生前遺伝子診断技術として,母体血中の胎児有核赤血球(NRBC)を用いた技術が注目されている.しかしながら,母体血中にはごくわずかな数のNRBCしか循環していないため,どのように効率よく回収・同定するかがこれまでの課題であった.今回,抗CD45抗体磁気ビーズを用いて白血球系の除去をおこなうことで,NRBC同定の効率化を試みた.抗CD45抗体磁気ビーズ処理により全体の細胞数を減少させることによりNRBCが濃縮され,回収・同定の効率化が実現した.さらに,スライドグラスに塗抹された全細胞に占める有核細胞の割合が減少することで,顕微鏡観察においても効率化の効果が得られ,最終的なNRBCの同定数を1.8倍増加させるということが判明した.また,これまでスライドグラスに塗抹された細胞からのNRBC同定は顕微鏡下の目視により行われてきたが,今回,われわれは細胞自動検出機を用いることにより検出の自動化を試みた.その結果,目視で検出する場合と比べ,作業時間の大幅な短縮と作業負担の劇的な軽減に成功した.細胞自動検出機を用いる効果は作業時間,作業負担の減少にとどまらず,最終的に検出されるNRBCの同定数を約3倍に増加させることが確認できた.抗CD45抗体磁気ビーズ処理と細胞自動検出機を併用することにより,NRBC回収・同定の効率化が相乗的に高まるだけでなく,結果としてNRBCの検出・同定効率を高めることにもつながった.このようにして同定したNRBCに対してFISH解析を実施し,実際に性別判定を試みたところ,羊水診断による性別判定で男児と診断された2例については,どちらもXYシグナルをもつ細胞を確認できた.
  • 福田 直, 佐々木 晶子, 小林 信介, 北原 功雄, 水谷 徹
    2012 年 72 巻 4 号 p. 479-487
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    放射線治療後腫瘍制御が不良で手術治療を施行した10例の手術適応,手術時期,画像所見,術中所見,病理所見に関して検討した.平均年齢は52.3歳(17~70歳),男性5例,女性5例,放射線治療はガンマナイフ8例,Xナイフ1例,陽子線1例で,放射線治療から手術にいたる期間は平均63.3か月(30~96か月)であった.手術適応は,腫瘍実質成分増大が原因で神経症状の悪化や追加が認められた症例,嚢胞が腫瘍実質外に拡大し神経症状の悪化や追加が認められた症例の2つに分類した.画像所見は,Large cystic type(LC),Multi-micro cystic type(MC),Solid component enlargement type(SC)の3つに分類した.放射線治療から手術治療までの期間に関しては,2年以上5年未満,5年以上8年未満,8年以上の3つに分けた.手術適応では腫瘍実質の増大が認められた症例が2例,嚢胞の腫瘍実質成分外への拡大が認められた症例が8例であった.画像所見ではLCが8例,MCが2例,SCが0例であった.手術までの期間は2年以上5年未満が4例,5年以上8年未満は4例,8年以上は2例であった.病理所見では悪性転化していた症例はなく,放射線治療による血管閉塞や血管透過性の亢進が病態の主体であった.MCはHemosiderosisが顕著で小出血を繰り返していることが予想された.術中所見では,周囲の神経や小脳との癒着やくも膜肥厚は顕著で全摘出は非常に困難であったが,減圧手術に関して,LCは出血が少なく容易であり,MCは易出血性で困難であった.過去の報告で認められたSCは照射後2年以上経過したものを対象とした本報告では認めなかった.過去の報告でも悪性転化した1例を除くと全て照射後2年以内の症例であり,Transient swellingであった可能性がある.
  • ―細胞質内空胞含有細胞の出現率について―
    磯崎 岳夫, 瀧本 雅文, 太田 秀一, 北村 隆司, 津田 祥子, 楯 玄秀, 光谷 俊幸
    2012 年 72 巻 4 号 p. 488-496
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    中皮腫は発症数が増加している疾患である.その細胞像は非常に多彩であり,腺癌や反応性中皮との鑑別が困難であることから細胞診での診断率は高くはない.今回,われわれは中皮腫と反応性中皮との鑑別に有用と考えられる細胞質内空胞含有細胞の出現率を検討した.対象は上皮型中皮腫17例と反応性中皮10例の体腔液標本を用いた.細胞質内空胞含有細胞を(1)全周性辺縁空胞様細胞(peripheral vacuole-like cell:以下PV細胞),(2)中心部空胞細胞(central vacuole cell:以下CV細胞),(3)PV細胞とCV細胞の条件を満たさない空胞含有細胞である空胞細胞(vacuole cell:以下V細胞)に分類した.各々の細胞質内空胞含有細胞の出現率を検討した結果,PV細胞が反応性中皮群に比較して中皮腫群で有意に高い出現率を示した.さらに中皮腫群を出現形態により立体的集塊出現群(中皮腫A群)と平面的集塊,孤在性の出現を主体とする立体的集塊非出現群(中皮腫B群)に分類し,比較検討したところ,中皮腫B群においてPV細胞,CV細胞の出現率が有意に高かった.このことから中皮腫と反応性中皮の鑑別,特に反応性中皮との鑑別を要する平面的集塊,孤在性を示す中皮腫症例においては,PV細胞,CV細胞の出現は有用な鑑別所見になり得ると考えられた.よってPV細胞,CV細胞が認められた場合は,中皮腫の可能性を考え,積極的な臨床的精査をする必要がある.また,細胞診検査において反応性中皮と診断され易い中皮腫症例の誤判定を防ぐことが可能になると考えられた.
  • 村上 悠人, 斎藤 光次, 平林 幸大, 原田 健司, 山岡 桂太, 諸星 利男, 国村 利明, 中西 亮介, 渥美 敬
    2012 年 72 巻 4 号 p. 497-502
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    大腿骨頭壊死症は無腐性,虚血性の壊死病変である.その発生機序は諸説報告があるが不明な点が多い.また病理学的報告も多数なされているが,骨頭の血管形態に関する報告は少ない.今回われわれは大腿骨頭壊死症の摘出骨頭において骨頭の血管形態の観察を行い変形性股関節症との違いについて比較検討したので報告する.対象は人工股関節置換術あるいは人工骨頭挿入術時に摘出した骨頭で,大腿骨頭壊死症28症例28骨頭とし,コントロール群として変形性股関節症6症例6骨頭を用いた.摘出骨頭を骨頭中央冠状面で2分割し,中央スライスにてHE標本を作製した.骨頭全体における血管形態の観察,境界領域における血管数および血管径の計測を行い比較検討した.誘因別(アルコール,ステロイド),性別での比較では血管径,血管数共に有意な差はみられなかった.血管形態の観察に関しては境界領域において15症例(53.6%)で血管内腔の『島状隆起』を認めたが,コントロール群ではみられなかった.また,周囲の修復領域では血管に富む肉芽組織や線維性修復反応がみられた.損傷血管は線維芽細胞の遊走および血管内皮細胞の増生・被覆により修復されるが,大腿骨頭壊死症では修復過程の途中で反復性に機械的刺激を受けることになる.この刺激により修復過程にある肉芽組織がさらに内腔に向かって不規則に隆起し,さらに乳頭状隆起となり,乳頭状隆起したものが切れ方により島状隆起として観察されたと考えられる.これは島状隆起内に細小血管がみられることや周囲に修復反応がみられることからも裏付けられると考えられる.そしてコントロール群ではみられなかったことから,本疾患に特徴的な所見ではないかと考えられる.次いで血管数に関してはStage 4がStage 2とStage 3を合わせたもの(Stage 2+3)に比して有意に多く,血管径に関してはC2がC1に比して有意に大きかった.血管数に関してStage 4がStage 2+3に比して有意に多かったのは,本疾患は通常の炎症反応と異なり,修復と壊死が繰り返されるため経過が長く,修復と壊死の反復が多いStage 4では血管数がより増加すると考えられる.そしてこの2つの所見は本疾患の反復性の修復と壊死を裏付けるものと考えられる.
症例報告
  • 菊嶋 修示, 伊藤 英利, 兼坂 茂
    2012 年 72 巻 4 号 p. 503-508
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    要約:われわれは2010年4月からの12か月間に6例の偶発性低体温症を経験した.年齢は74±17(50から95)歳で,その内5例は12月から2月のいわゆる冬季の発症であった.また全例が屋内発症であった.1例が1次性偶発性低体温症で5例が2次性偶発性低体温症であった.来院時の直腸温は31.2±2.0(28.3から33.1)°Cであった.4例で心電図上J波を認めた.全例で低体温に対し能動的体外復温を行った.体表温度が深部体温より高値であった症例があり診断に際し注意すべきと考えた.3例が死亡したが,低体温症が直接死因ではなく,基礎疾患(肝硬変,慢性閉塞性肺疾患,重症肺炎)による死亡であった.Body mass indexを生存例と死亡例で比較すると,生存例は22.4±0.46kg/m2で死亡例では12.07±1.85kg/m2と,死亡例で有意に(P = 0.015)低値であり,body mass indexは予後の指標になることが示唆された.
  • 田中 宏典, 古森 哲, 富田 一誠, 瀧川 宗一郎, 稲垣 克記
    2012 年 72 巻 4 号 p. 509-513
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    症例は5日前からの左下肢痛を主訴に当科を初診した67歳の男性である.合併疾患として直腸癌があり,2回の手術を受け,その後の抗癌剤治療が進行中であった.初診時所見で左第4腰椎神経根領域に疼痛を認め,腰部脊柱管狭窄症など念頭に精査,治療を開始した.初診から5日経過後に疼痛の増悪と共に左第4,5腰椎神経根領域に水疱を伴う皮疹を認めた.下肢帯状疱疹と診断し抗ウィルス薬の点滴と軟膏による治療を開始した.治療開始から1か月後に下肢痛も軽快し水泡も痂皮化した.本症例では,当初腰椎疾患を疑ったが,下肢痛の出現から10日後に皮疹が出現して初めて診断が可能となった例である.腰椎疾患が多い高齢者では下肢痛の病因としての帯状疱疹は初診時の診断が難しい.免疫能低下が考えられる高齢者の下肢痛では,帯状疱疹も念頭に置いて注意深く診察する必要があると思われた.
  • 小野寺 剛慧, 村松 英之, 林 稔
    2012 年 72 巻 4 号 p. 514-519
    発行日: 2012年
    公開日: 2013/03/14
    ジャーナル フリー
    ドクターヘリ搬送が転帰に影響したと考えられる大出血を呈する顔面多発骨折の一例を経験した.症例は32歳男性で,交通事故により受傷した.ドクターヘリ要請後13分で現場に到着し,初期治療を開始した.当院へ搬送後,動脈塞栓術を施行し,救命することができた.大量出血を呈する顔面骨多発骨折は救命率が低く,緊急性の高い外傷の一つである.一方で,ドクターヘリは初期治療開始時間が非常に短縮され,脳血管障害,心・大血管疾患,多発外傷などにおける有用性が報告されている.今回われわれは緊急性の高い重症顔面外傷においても有用であると考えたため報告した.
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