抄録
ラット脳および肝mitochondria MAOの基質濃度による基質特異性の変化について検討した.基質β-phenylethylamime, benzylamine, tyramine, dopamine, tryptamineおよびserotoninの濃度を変化させ, それらのMAO活性に対するclorgylineの阻害作用を検討した.Tyramine, dopamine, tryptamineではいずれの濃度の場合も阻害曲線は両typeのMAOによる酸化を示すdouble-sigmoid型であった.一方, benzylamineはいずれもclorgylineに抵抗性を示すsingle-sigmoid型 (MAO-B) であり, 従来の基質特異性の成績と一致した.しかし, ラット肝の場合, serotoninおよびβ-phenylethylamineではその濃度変化に伴い基質特異性は著明に変化した.すなわちserotoninの場合, 低濃度 (0.01-0.05mM) ではclorgylineに感受性の高いsingle-sigmoid型 (MAO-A) を示したが, 基質濃度の増加と共にdouble-sigmoid型へと移行した (MAO-A, MAO-B) .一方, β-phenylethylamineの場合, 低濃度ではclorgylineに感受性の低いsingle-sigmoid型 (MAO-B) を示したが, これに対し高濃度ではdouble-sigmoid型 (MAO-A, MAO-B) を示した.β-phenylethylamineとラット肝mitochondria MAOを用い酸素濃度の変化によるMAO活性への影響をLineweaver-Burkプロット法により検討した.その結果, 肝mitochondria MAO (MAO-A, MAO-B) と, clorgylineでMAOを選択的に阻害した肝mitochondria (MAO-B) で1よ, いずれも酸素濃度の増加につれてMAO活性も上昇し, その際のプロットはいずれもping-pong mechamismでの反応進行を示唆する平行直線群を示した.以上の結果, MAO活性の測定に使用する基質のうち, 特にserotoninとβ-phenylethylamineはその濃度により基質特異性が変化することが判明した.