昭和医学会雑誌
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赤痢菌特異多糖類抗原の免疫電気泳動学的性状
西山 英大
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1982 年 42 巻 6 号 p. 763-771

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抄録
供試菌として各亜群赤痢菌Shigella dysenteriae, Shigella flexneri, Shigella boydii及びShigella sonneiを用い.SchlechtらのMedium D1.5培地で培養して得た乾燥菌体からWestphalらの方法I及びII, 及びBoivinのtrichloroacetic acid抽出法により調製した菌体特異多糖類抗原について免疫電気泳動を行った.各亜群赤痢菌抗原の同種抗血清による免疫電気泳動図では, 抗原孔附近 (区画c) 及びそれより陽極側の位置 (区画B) に各々数本ずつの沈降線が認められた.これら沈降線の出現位置から, 供試赤痢菌抗原の泳動図を2群―第I泳動群及び第II泳動群に分類した.第1群にはSh. dysenteriae, Sh. boydii, Sh. sonnei及び一部のSh. flexneri (type 2b, 6) 各菌の抗原が属し, 沈降線は区画B及びCの両区画に認められる.第II泳動群は第I群以外のすべてのSh. flexneri各菌の抗原を含み, その沈降線は区画Cのみに出現する.Sh. sonnei及びSh. flexneri type 2b, type6各菌の抗原は, 100℃, 1時間加熱処理によって免疫電気泳動図に変動が見られることから, これらの抗原は上記加熱条件によって何等かの変化を受ける易熱性抗原成分を含有することが判明した.しかしその成分の本態については, なお不明である.赤痢菌菌体から凍結融解を繰返して得られたGrasset抗原は, 免疫電気泳動により区画B及びCにはtype specific antigen, 区画Cより陰極側の位置にgroup specific antigen及びBelayaのShigella specific generic antigenが証明されるといわれるが, 本実験に用いた特異多糖類抗原においては, 免疫電気泳動図からはtype specific antigen以外の抗原成分を見出すことは困難であった.Sh. dysenteriae type 6, Sh. boydii type 6及びSh. sonnei type 2各菌の抗原との間に免疫電気泳動により, 共通抗原が認められた.この抗原成分を解明するため, Sh. sonnei type2よりKuninのenterobacterial common antigen (CA) を分離し, Sh. dysenteriae type6及びSh. boydiit ype6抗原と各々比較検討の結果, この共通抗原の1つはKuninのCAに由来するものであることは明らかである.
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