昭和医学会雑誌
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保存期慢性腎不全の自然経過および自然経過に影響する諸因子について
高橋 健
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1984 年 44 巻 1 号 p. 75-81

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抄録

慢性腎不全患者の保存期治療にあたり, その自然経過と進行に影響する諸因子を明らかにすることは使用薬剤の治療効果を判定するうえにおいても, また, 透析療法に導入すべき時期を推定するうえにおいても臨床上重要な意義をもつ.そこで85名の保存期腎不全患者 (血清クレアチニン (Cr) 3mg/dl以上, 2カ月以上の経過観察が可能な者) を対象に, 2~4週間ごとの血清Cr尿素窒素 (BUN) などの生化学検査値, 性, 年齢, 血圧, 原疾患などの諸因子を調査し, 保存期腎不全患者の腎機能低下の自然経過と, それに影響する諸因子について検討を加え, 以下の結論を得た. (1) 85名中75名 (88%) の患者で1/Cr一観察期間直線は危険率0.01以下の逆相関関係を示した. (2) この相関直線の勾配は, 腎不全進行のスピードを表わし, 29歳以下の若年者群, 拡張期血圧の高い患者群, BUN/Cr高値の患者群, 基礎疾患に糖尿病性腎症を持つ症例などでは腎不全の進行が速いことが明らかとなった. (3) この勾配の推移は, 個々の症例における治療効果の判定, 予後の推定に極めて有用と思われた.

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