昭和医学会雑誌
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血清クレアチンキナーゼ-MMサブバンド
―血中CK-MMサブバンドの正常値と急性心筋梗塞症におけるその変動―
中村 直樹鵜澤 龍一石井 暢
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1984 年 44 巻 3 号 p. 331-336

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抄録
Agarose film電気泳動法による血中クレアチンキナーゼ (CK) アイソエンザイム分析で, 通電時間を通常の5倍, 120分に延長したところ, 通常fastγ-グロブリン位に単一のバンドとして認められるCK-MMは3本のサブバンドに分かれた (陽極側よりCK-MM1, CK-MM2, CK-MM3とする) .そしてこのCK-MMサブバンド分析を健常人30名を対象として行なったところ, CK-MMサブバンド分画比の個体間差は極めて小さくほぼ一定しており, CK-MM1=56.3±5.2%, CK-MM2=29.5±4.8%, CK-MM3=14.1±2.6% (X±SD) の正常値が得られた.さらにこのCK-MMサブバンドを急性心筋梗塞症で発症後経時的に観察したところ極めて興味ある結果を得た.すなわち, 発症後4~12時間の極めて早期には健常人では最も含量の少ないCK-MM3が著明に高値を示すが, 時間の経過とともにCK-MM3は減少し, これにかわってCK.MM2が, さらに時間が経過するとCK-MM1が主たる分画となり, 発症後36~48時間で正常値に復する.この3本のCK-MMサブバンドのうちCK-MM3とCK-MM1との比CK-MM3/CK-MM1は健常人では0.25±0.02であり, 正常値上限を0.30とすると, 急性心筋梗塞発症後の時間的陽性率は4時間ですでに100%異常高値となり, この異常は8時間後まで持続する.つづいて発症後12~24時間では90%となり, それ以後は経時的に漸減した.これらの結果から, CK-MMのサブバンドの測定, CK-MM3/CK-MM1は発症後極めて早期の急性心筋梗塞症の診断に有用であると考えられる.
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