昭和医学会雑誌
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ラット視床下部視索前核におけるソマトスタチン・ニューロンの神経支配に関する電顕細胞化学的研究
竹内 正雄
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1984 年 44 巻 3 号 p. 413-423

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抄録
ラット視床下部の室周視索前核領域におけるsomatostatin (SRIF) ニューロンに対する上位中枢の制御機構を形態学的に検索するために, 抗SRIF血清を用いたPAP法による電顕的免疫細胞化学によって, SRIF様免疫陽性ニューロンにシナプスを形成する軸索終末を観察した.さらに, 5-hydroxydopamine (5-OHDA) 脳室内投与法による5-OHDAの取り込み, または3H-noradrenaline (3H-NA) 脳室内投与後のオートラジオグラフィーとSRIFの免疫細胞化学の組み合わせ法によって, カテコールアミンニューロンとSRIFニューロン間の相関を調べた.室周視索前核領域には, SRIF様免疫陽性の顆粒小胞 (直径80~120nm) を含むSRIFニューロンの細胞体や神経線維が多数観察された.また, これらSRIF様免疫陽性ニューロンの細胞体や神経線維に性質不明の軸索終末が, axo-somaticおよびaxo-dendriticまたはaxo-axonic synapsesを形成している像も多数観察された.これら免疫陰性の前シナプス終末は, その中に含まれているシナプス小胞の種類によって, 明るい球形の小胞 (直径40~50nm) のみを含むものと, そのほかに大きい顆粒小胞 (直径70~100nm) が少数混在するものが区別された.5-OHDA投与法または, 3H-NAのオートラジオグラフィーとSRIF免疫染色の組み合わせ法による観察の結果, 5-OHDA反応陽性終末および3H-NA反応陽性終末が, SRIF様免疫陽性ニューロンの細胞体や突起にシナプスを形成しているものが比較的多数観察された.稀に, 3H-NAの銀粒子が, SRIF様免疫陽性終末の中に少数存在しているのが観察された.そのほか, 室周視索前核領域において, SRIF様免疫陽性終末が, 免疫陰性のニューロンの細胞体や突起にシナプスを形成している像も稀に観察された.これらの所見から, ラット視床下部の室周視索前核領域において, カテコールアミン作働性ニューロンが, シナプスを介してSRIFニューロンの分泌を調節している可能性, およびSRIFとモノアミンが同一神経終末内に共存している可能性が示唆された.
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