昭和医学会雑誌
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CCl4肝障害に及ぼすS-adenosyl-L-methionine-sulfate-tosylateの影響
鈴木 純一川島 育夫中山 貞男坂本 浩二
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1985 年 45 巻 4 号 p. 499-505

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抄録

四塩化炭素 (CC14) 肝障害に対するS-adenosyl-L-methionine (SAMe) の作用を, methionineを対照薬物とし, malotilate, laennecなどの肝臓作用薬と比較検討した.実験には体重180~190gのSprague-Dawley (SD) 系雄性ラットを用いた.CC14肝障害はCCl4 0.2mg/kg経口投与により作成し, SAMe, methionine, laennecは1日1回CC14投与直前に4日間静注し, malo-tilateは1日1回CC14投与1時間前に4日間経口投与した.CC14最終投与24時間後に, 血液, 肝を採取し脂質の測定を行った.肝蛋白はCCl4投与により低下したが, SAMe, methionine, laennec投与で増加を示し, malotilateでは有意な増加を示した.肝脂質はCC14投与によりtotal lipid (TL) , total cholesterol (TC) , triglyceride (TG) , nonesterified fatty acid (NEFA) の増加を認めた.SAMe 10mg/kg投与ではTL, TCの変化がみられずNEFAとTGの減少を示し, methionine, laennec, malotilate投与でもTGの減少を示した.malotilate投与ではCCl4投与によるTC, NEFAの増加を有意に抑制した.血清脂質はCC14投与によりTC, TGの減少を示した.SAMe10, 50mg/kg投与ではTGは低下し, methionine, laennec投与ではTCの減少は抑制され, TGはさらに減少した.血清GOT, GPTはCC14投与により上昇し, 1actate dehydrogenase (LDH) はCCl4投与により低下した.SAMe 10mg/kg, malotilate投与では, GOT, GPTの増加は抑制され, LDHはさらに減少した.methionine投与ではGOT, LDHが低下した.lae-nnecではLDHが低下した.光顕による肝の組織学的検索では, CC14投与により中心静脈周囲の細胞壊死と著明な脂肪沈着がみられ, 明確な小葉中心性の脂肪変性と細胞壊死変性を認めた.SAMe 10, 50mg/kg, methionine, 1aennecによる肝組織変性の改善は認められなかった.malotilate投与では脂肪変性, 壊死変性が明らかに抑制され, 対照と類似の組織像を示した.以上の結果よりSAMeはmalotilateより弱いが肝障害改善作用を有することが認められた.

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