昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
陥凹性胃癌の深部浸潤と悪性サイクル
熊谷 一秀安井 昭西田 佳昭中嶋 眞鈴木 博
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 46 巻 2 号 p. 243-248

詳細
抄録

陥凹性胃癌の粘膜下層以下への深部浸潤癌量を推測する際癌巣陥凹面の性状を理解することが大切である.特に癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌は潰瘍の消長に伴いその陥凹面の形態の変化を観察でき (悪性サイクル) , 深部浸潤癌量の指標となり得るかを検討した.対象は教室で切除された癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌31例で, 陥凹性早期胃癌12例 (m癌8例, sm癌4例) , 早期胃癌類似進行癌4例, Borrmann 2, 3型15例である.これらの内視鏡所見, 肉眼所見, 病理組織学的所見と対比し, 陥凹面の性状と浸潤癌量との相関を検討した.その結果, 粘膜癌は癌巣陥凹面が顆粒状形態を示す傾向, Borrmann型進行癌は粗大結節, 無構造を示す傾向を認めた.さらにsm癌をsm層の癌量により微量浸潤, 中等浸潤, 高度浸潤と分けると微量浸潤例はm癌の陥凹面の性状に, 高度浸潤例はより進行癌の性状に近似し, 早期胃癌類似進行癌のpm層の浸潤量を同様に検討しても, 陥凹面の性状と浸潤癌量はある程度の相関を認めた.以上, 癌巣内潰瘍を有する陥凹性胃癌の深部浸潤癌量を推量するにあたっては, 癌巣内潰瘍の消長 (悪性サイクル論) を充分に考慮に入れて検討すべきであろうと思われた.

著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top