昭和医学会雑誌
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スポーツマンの急速減量に関する実験的研究
井川 正治
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1986 年 46 巻 2 号 p. 261-268

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抄録

スポーツマンの急速減量に関してよりよい方法を見出すために, 減量食の内容特に蛋白質摂取量と栄養素のバランスに留意して, 大学レスリング選手に7日間で体重の約10%の減量を行なったときの生体負担について検討した.高蛋白食 (2.09/kg/day) と普通蛋白食 (1.29/kg/day) の2群に分け, 減食とトレーニングを併用した急速減量を行なった.その際の栄養摂取量, 体重, 皮脂厚, 血液, 尿および運動能力等の測定をした.その結果, 7日間の減量により5.5kgの体重減少があり, 減少率では体重が8.5%, 皮脂厚は12.6%, 体脂肪量は15.4%, LBMは7.7%の減少であった.全身持久的能力, 筋力, パワーは, 減量の影響を受けなかった.またRBC, Ht, MCHCも減量による影響を受けておらず, 血液の濃縮はみられなかった.しかし, TP, AIG比, UNは減量が進むにつれ低下し, 正常範囲を逸脱したことより, 低蛋白, 低エネルギー状態であった事が伺われたが, 脂質代謝が亢進し活動に必要なエネルギーを脂肪により供給していたと考えられる.その裏ずけとしてFFAが有意な増加をしめした.減量時の体蛋白の崩壊を出来る限り防止するための最低摂取蛋白量は1.29/kg/dayであることが, 窒素出納より確認された.スポーツマンが減量するにあたり注意すべきことは, 普段より栄養状態と栄養素のバランスの取れた食事に気を付け, 減量時には良質の蛋白質を十分摂取し, 不足しがちなビタミン・ミネラル等は, 薬物等による摂取も合わせて行なう必要がある.

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