昭和医学会雑誌
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DNP-Ficollのadjuvant活性発現に於けるmacrophageの関与
梶山 浩大原 秀治太田 秀一田代 浩二三田 〓
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1986 年 46 巻 2 号 p. 269-278

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抄録

羊赤血球 (SRBC) で免疫したICR系マウスから得た脾細胞 (あるいは, この細胞集団から分離したB細胞) の培養系に於いて, 我々はDNP-Ficollにadjuvant活性のあることを今回はじめて見出した.そこで次にその作用機構を調べた.免疫応答の検索には, Cunningham and SzenbergらのPFC assay法を選んだ.細胞をDNA-Ficollと共に48時間培養した後に, SRBC抗原に対する抗体産生細胞 (PFC) の数を測定した.実験結果は以下のようであった. (1) SRBCで免疫後4日目および6日目の脾細胞を用いた時にのみ, DNP-Ficoll (0.02μg/ml) の添加で抗SRBC (IgM) PFCの数が対照より増加した (351±29.0: 240±23.8/106B細胞) . (2) 免疫後4日目の脾細胞から分離したB細胞で, 用量 (0.002, 0.02および0.2μg/ml) と抗SRBC応答反応関係を検討した.0.02μg/ml添加した時に最高のPFC数を得た.しかし上記脾細胞の場合と比べるとその免疫応答賦活効果はきわめて弱かった (162.1±15.5: 119.9±3.8/106B細胞) . (3) このDNP-Ficollはマクロファージ (Mφ) あるいはT細胞由来液性因子の産生に影響を与えない. (4) B細胞にT細胞を加えた実験系において, T細胞の存在はDNP-Ficollの活性発現には無関係であった. (5) B細胞とMφを共存させた時にはB細胞だけの時よりもDNP-Ficollの添加によりPFCの数に増加がみられた.しかしその増加はきわめて僅かに過ぎなかった. (6) 脾細胞で得られた数値に最も近い数のPFCが観察されたのは, B細胞にT細胞およびMφを加えた場合であった.従って, この実験系で見出されたDNP-Ficollのadjuvant活性は主としてMφをmediateした直接的な細胞間相互作用により発現されるものと考えられた.

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