昭和医学会雑誌
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分離肝細胞CCl4障害におよぼすLaennecの影響
坂本 浩二殿岡 まゆみ阿部 浩一郎笠原 多嘉子
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1986 年 46 巻 3 号 p. 351-358

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抄録

Laennec (LAE) は, ヒト胎盤水解物であり, 肝疾患に適応され, 降トランスアミナーゼ作用を有する薬物である.今回, 我々はラット単離および初代培養肝細胞を用い, LAEのCCl4肝細胞障害におよぼす作用を検索した.培養medium中に添加したLAEおよびCCl4の作用は, medium中に肝細胞から逸脱するGOT, GPT, LDH, OCTの活性およびUrea-Nの分泌量を指標として観察した.CCl41mM, 2mMの低濃度では, 単離および初代培養肝細胞において酵素の逸脱抑制傾向が見られ, 膜安定化傾向がうかがわれた.また10mMのCCl4では著しい酵素逸脱がみられた.単離肝細胞においてLAEは単独で酵素逸脱を抑制したが, 5mM CCl4との併用ではその酵素逸脱を増強した.初代培養肝細胞においてLAEは単独で酵素逸脱を抑制し, Urea-N分泌量を増加させた.5mM CCl4との併用ではその酵素逸脱を抑制しUrea-N分泌量を増加させた.この単離肝細胞と初代培養肝細胞における作用の相違は, 単離直後では肝細胞の膜機能, 蛋白代謝能の低下があるが, 初代培養肝細胞ではin vivoに近い機能を保有するようになるためと考えられる.14C-Leucineの肝細胞蛋白への取り込みはCCl4およびLAE併用において, 取り込み量が減少した.初代培養肝細胞における肝細胞模型病像の作成にはCCl45mMが適当と思われる.またLAEはCCl4肝細胞障害に対し, 肝細胞膜機能を好転させる傾向があると思われる.

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