昭和医学会雑誌
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手術予定患者における体位別肺機能の測定
畠中 節夫
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1987 年 47 巻 2 号 p. 167-175

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抄録
26乃至77歳の手術予定患者66症例を対象とし, より臨床経過に則した術前肺機能検査を行う事を目的として, 体位の違いが術前の肺機能に及ぼす影響を, 年齢別に検討した.肺活量測定法, 最大呼気流量曲線single breath N2, 及びmultiple N2washoutなどの測定を手術施行前一週間以内に坐位と仰臥位で行った.得られた結果を, 夫々20乃至30, 40, 50, 60, 70歳代に分けて集計し, 更に, 60歳以上29例を%VC>80%及びFEV1.0%>70%の両条件を満足するNPS群 (N=16) と, 先の条項の片方または両者を満たし得ないPS群 (N=13) とに分けて比較検討した.坐位から仰臥位にすると, 肺気量分画は多彩に変動した.即ち, ERVの減少のほうがIRVの増加より若干多いので, VCは坐位では各年代に於て約5%減少した・VCの変動の程度は同じであったが, PS群とNPS群に於けるIRVとERVの変動には差があった.FRC, RV, 及びRV/TLCなどは仰臥位で減少したが, その程度は年代が若い程強かった.FEV1.0の体位による差は年代が高くなるに伴い拡大した.全体ではFEV1.0%への体位による変動は大きくない.しかし, 坐位では正常値を示したにも拘わらず, 仰臥位では70%以下へ低下した例が高年代にあった.V25は, 最も若い年代を除くと仰臥位では坐位より10%前後減少した.高い年代では△N2は著しく上昇し, 特に仰臥位では高値を呈し, PS群とNPS群との間には両体位に於いて有意差が認められた.CVは20乃至30歳代では仰臥位のほうが約2倍多いが, 年代が高くなるにしたがって, 仰臥位でのCVが小さくなり, 60および70歳代では両者の関係は逆転した.CV/VCは坐位では加齢に伴って増加し, 一方, 仰臥位では50歳代以上では近似した.CV/VCの体位による変動はCVと略同傾向を示した.各年代に於て坐位のFRC-CCは有意に大きいが, 年代が高くなるに連れて仰臥位との差は小さくなった.各年代に於てLCIとIDIには体位による変動は強くないが, TCVとPN2CDには幾つかの年代で両体位間に有意差が認められた.以上の如く, 体位は肺機能に大きく影響しているが, その程度は年齢により異なることが示唆された.高齢者で所謂肺機能正常群と異常群とでは, 仰臥位にした際の肺気量分画のプロポーションの推移が異なっていた事, 更に, 坐位では正常であっても仰臥位では肺機能が著しく悪化する例があることなど, 両体位における肺機能検査は新しい情報を得られ, 術前検査として有用と思われた.
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