昭和医学会雑誌
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膝脛骨関節軟骨面の変性に関する研究
山崎 富士雄
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1987 年 47 巻 4 号 p. 481-494

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抄録
変形性関節症の発生機序の一端を解明する目的で, 屍体膝関節を用いて脛骨関節軟骨面の肉眼的変化を観察すると共に, 半月板の形態と変性, 関節軟骨の厚さ, 軟骨下骨梁構造について検討した. (1) 対象は49~85歳 (平均69.2歳) の28体52関節で, まず関節軟骨面, 半月板の肉眼的観察をを行った後, ほとんど変化のみられない20関節の硬組織標本を作製これらから関節軟骨の厚さと軟骨下骨梁構造を調査した. (2) 関節軟骨面の変性は内外側顆共に露呈部および半月板下部後方に多く認められた。質的に前者には軽度の変性が, 後者 (とくに外側顆) では高度の変性が多くの例でみられた. (3) 半月板の変性度と関節軟骨面の変性度とは必ずしも一致しなかった.しかし円板状半月板やそれに類する半月板では関節軟骨面の変性が明らかに多いため, 正常の形態を逸脱した半月板は関節の不適合性をきたし, 骨関節軟骨面や半月板自身の変性を惹起しやすいと考えられた. (4) 関節軟骨の厚さは内外側顆共に露呈部が半月板下部よりも厚く, とりわけ外側顆の露呈plateau部は最大の厚みを有する.半月板下部では前方から後方へと次第に厚さを増す傾向がみられた. (5) 内側顆の骨梁と軟骨下骨皮質は露呈部で厚く密であるのに対し, 半月板下部では骨梁は粗で骨皮質も薄い.外側顆にも同様の傾向がみられたが, その差は内側顆ほど顕著ではない.また外側顆には関節面に直交する骨梁群が露呈部の後方から半月板下部の後方にかけて密に存在していた. (6) 内側顆の半月板下部は関節軟骨の厚さや骨梁構造に乏しく, また変性も軽度であることから内側半月板の大いなる負荷緩衝機能が示唆された.一方, 外側顆では骨梁密度は粗であるものの関節軟骨は厚く, これは移動性の大きい半月板, 関節面の凸状形態という荷重分担面の不利を代償するためのものと考えられた. (7) 外側顆後方にみられた関節軟骨面の欠損などの高度の変性はhypopressureではなく, hyperpressureによるものと考えられた.
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