昭和医学会雑誌
Online ISSN : 2185-0976
Print ISSN : 0037-4342
ISSN-L : 0037-4342
母指CM関節症
―臨床例, 屍体標本および三次元光弾性実験からみた発症機序の検討―
山上 繁雄
著者情報
ジャーナル フリー

1987 年 47 巻 4 号 p. 473-480

詳細
抄録
過去10年間に当科手の外科診を受診した母指CM関節症患者31例45関節の臨床像およびX線所見を検討するとともに, 屍体標本の母指CM関節 (19体30関節, 平均年齢68.8歳) の単純X線評価, 関節軟骨の肉眼的観察およびこれらを樹脂包埋後連続切片として関節面の形態の観察を行ない, あわせて三次元光弾性実験を行なって, 次の結果を得た。臨床的には, (1) 性別は2: 1で女性に多く, 年齢は中年以降で, 左右差はなかった。 (2) 痛みの強さと, X線上の関節症変化の程度とは相関はなかった。屍体標本では, (1) 単純X線上, 21関節 (70%) に関節症変化を認めた。 (2) 肉眼的に, 25関節 (83%) に関節軟骨の変性を認めた。 (3) 軟骨変性の好発部位は, 第一中手骨の関節面では背側と掌側で, 大菱形骨の関節面では中央と橈側および尺側であった。 (4) 単純X線上関節症変化が強いほど軟骨変性の出現頻度が高かった。 (5) CM関節の内外転に対応する関節面では, 第一中手骨, 大菱形骨とも関節面の曲率は均一ではなく, 第一中手骨の凸の頂点と, 大菱形骨の陥凹の中心はともに尺側にあり, 橈側の曲率は尺側より大きい。従って母指の外転時には, 第一中手骨の凸の頂点は大菱形骨の陥凹の中心に対応し, 関節は骨性に安定した状態になる。 (6) CM関節の屈伸面に対応する関節面では, 第一中手骨の関節面は陥凹し, 大菱形骨の関節面は凸となり, その曲率は第一中手骨のほうが大きいため, 第一中手骨は大菱形骨の関節面上をかなり自由に動くことができる。 (7) またこの関節面は, 第一中手骨の長軸に対して, 尺側の切片ほど掌側に傾斜するため, 母指が対立位をとって第一中手骨に軸圧が加わると, 第一中手骨は回旋する。三次元光弾性実験では, 軸荷重で第一中手骨基部の背橈側に圧迫応力の集中を認めた。母指CM関節は, 極めて合理的な形態を有するが, ひとたび周囲の靱帯や関節包の支持を失うと, 第一中手骨に軸圧が加わったとき, 第一中手骨は対立位をとると同時に背橈側へ亜脱臼すると考えられ, 三次元光弾性実験結果はその裏づけとなった。従って, 前述の形態的特徴をもった母指CM関節に, 日常生活で頻回のストレスが加わって関節支持機構の弛緩が惹起され, 関節は安定性を失い, 母指CM関節症が発症すると推論した。
著者関連情報
© 昭和医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top