抄録
経穴でない部 (非経穴) を経穴を刺激する時と同じ条件で刺激しても鎮痛は出現しないが, 鎮痛抑制系の視床正中中心核外側部 (L-CM) や視床下部後部の一部 (I-PH) を破壊すると, 非経穴の刺激で鎮痛が出現する.同様の鎮痛はD-phenylalanine (DPA) を投与した後にも現われる.鎮痛抑制系は, 非経穴の刺激で鎮痛を発現する経路の一部にあたる中脳中心灰白質外側部 (LPAG) でこの経路に抑制をかけているが, DPAは鎮痛抑制系を直接抑制するのか, 鎮痛抑制系がL.PAGで抑制作用を現わす伝達物質に拮抗するのかは明らかでない.ラットの尾逃避反応を痛覚閾として, L-CM, I-PH, L-PAGにカニューレを挿入し, DPAを微量作用し, この問題に検討を加えた.DPAの84μ9をL-CMやI-PHに適用すると, 非経穴部の刺激で鎮痛が出現したが, L-PAGへの適用では鎮痛は出現しなかった.Cholecystokininの拮抗剤のproglumideは, モルヒネ鎮痛を増大すると報じられているが, この増大はproglumideが鎮痛抑制系を抑制して出現する可能性が考えられる.Proglumide 20μ9/kgを腹腔内投与すると, 非経穴部の刺激による鎮痛が出現した.DPAと同じ様にL-CM, 1-PHにproglumideを微量 (5~8ng) 適用すると, 非経穴部の刺激による鎮痛が出現したが, L-PAGへの適用では鎮痛は出現しなかった.以上の結果から, DPAやproglumideは直接鎮痛抑制系に抑制を加えて非経穴部の鎮痛を発現し, L-PAGで鎮痛抑制系の伝達物質に拮抗して鎮痛を発現するのではないことが明らかとなった.したがって, cholecystokininは鎮痛抑制系における伝達物質となる可能性が示唆された.DPAとcholecystokininとの関係はまだ明らかではない.