抄録
房室ブロック患者に対して, より生理的なpacing modeを選択する際, 洞機能障害 (SND) の有無が問題となる.また洞不全症候群 (SSS) の下位伝導障害の進展を推測する際も, 房室ブロックのSND合併率を検討することが参考になる.このことからI-III度房室ブロック78例と脚ブロック8例計86例をブロック程度別, 部位別に分類し, 洞機能について検討した.洞結節は自律神経の影響を強く受けているため, 63例について薬理学的自律神経遮断 (PAB) を用い, 自律神経の影響を受けない固有の洞機能の評価も試みた.SNDは86例中28例 (33%) でみられた.ブロック程度別, 部位別に有意差はなかったが, 部位別にはHV blockで42%, 2か所以上の伝導障害を有するMixed blockで54%と, この2群で多くみられた.max CSRTはIII度, HV, Mixed blockで延長しており, SSSと同様に著明に延長している例もあった.ブロック程度別には, PABによりSNDは62例中19例 (31%) から29例 (47%) に増加し, 特にIII度房室ブロックは43%から77%へ, 高度房室ブロックは20%から47%へ増加した.部位別にはPABによりSNDは63例中20例 (32%) から30例 (48%) へ増加し, 特にHis東内 (IH) blockは8%から62%へ有意に増加し, HV blockも45%から65%へ増加した.III度, 高度, IH, HV blockで内因性SND (PAB後のSND) が多く, % autonomic chronotropyで検討するとPAB前は交感神経緊張に傾いていた.この4群では, 洞機能正常化の方向に交感神経が作用して, PAB前SNDは過小評価されていると考えられた.一方他の群はPAB前副交感神経緊張状態にあり, SNDは過大評価される傾向にあった.PAB後新たにSND (+) となった例では高率に合併症を認め, 合併症を有する例は内因性SNDを示す可能性が高く, またPAB後の比較ではSND例の方が高齢であり, 高齢者ほど内因性SNDを合併しやすい可能性が示唆された.内因性SNDは従来考えられていた以上に多く, 明らかにSSSを合併している例もあることから, SSSと房室ブロックの中には同一の原因により伝導系障害を生じている一連の疾患単位と考えられる群があることが示唆された.また房室ブロックにpacemakerを植え込んだ後に, 自律神経の緊張状態が変化してSNDが顕性化し, より生理的なpacingを行うための至適modeが変化する可能性もある.このためpacemaker植込前にPABにより内因性SNDの有無を詳細に検討して, pacing modeを決定する必要がある.