昭和医学会雑誌
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合谷および足三里刺激による針麻酔鎮痛発現機序の同一性
黄 顕奮羅 昌平武重 千冬
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1988 年 48 巻 4 号 p. 485-492

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抄録
経穴と経穴でない部 (非経穴) とが区別されるのは, それぞれに連なる中枢神経経路が異なるためで, さらに針麻酔の鎮痛は経穴の刺激で出現するが, 非経穴の刺激で鎮痛が出現しないのは, 非経穴に連なる経路は, 非経穴や経穴の刺激で活動する鎮痛抑制系によって抑制されているからであることを, 足三里の経穴に相当するラットの前脛骨筋, 非経穴とした腹筋の刺激によって明らかにした.このような機構が他の経穴や非経穴の刺激でも現れるか否かを, 合谷に相当するラット上肢の背側第1指骨間筋および非経穴として上肢三頭筋を刺激して検討した.ラットの尾の逃避反応の潜伏期を痛みの閾値として, 合谷に相当する背側第1指骨間筋を筋が収縮する程度の強さで1Hzの頻度で刺激すると鎮痛が出現した.この鎮痛はナロキソンで拮抗され, 有効性の個体差を示した.この有効性の個体差は針鎮痛と同程度の鎮痛を発現する腹腔内投与の0.5mg/kgモルヒネ鎮痛のそれともよく相関し, また足三里に相当する前脛骨筋の刺激による鎮痛とも高い相関を示した.背側第1指骨間筋の刺激で中脳中心灰白質の背側部 (dorsal periaqueductal centralgray, D-PAG) に誘発電位が出現し, D-PAGの局所破壊で合谷刺激による鎮痛が出現しなくなった.これに反し, 非経穴とした三頭筋の刺激ではD-PAGに誘発電位は出現せず, かつ針鎮痛も出現しなかった.中脳中心灰白質外側部 (lateral periaqueductal central gray, L-PAG) からは経穴の前脛骨筋や非経穴とした腹筋の刺激で, 非特異的に誘発電位が出現したが, これは1Hzの刺激を重ねていると次第に抑制され約10数分後に出現しなくなるが, 同様の現象は背側第1指骨間筋や三頭筋の刺激でもみられた.上肢背側第4指根部を刺激した時には, 有効群の52例のうち13例で背側第1指骨間筋刺激よりも程度の低い鎮痛が出現し, D-PAGに誘発電位が出現したが, この刺激閾値は背側第1指骨間筋刺激による針鎮痛無効群のそれとほぼ等しかった.以上のことから, 合谷の背側第1指骨間筋や非経穴の三頭筋の刺激においても, 足三里や腹筋刺激で見いだされた経穴, 非経穴はそれぞれに連なる中枢神経経路によって区分されるという従来の見解が適用されることが明らかとなった.
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