昭和医学会雑誌
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CTによる第4腰椎椎体高断面の組織構成について
菊地 哲次郎
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1988 年 48 巻 5 号 p. 617-628

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抄録

CT写真について第4腰椎椎体高における腹部総断面積と皮下脂肪, 腹腔, 筋, 椎骨, 椎孔の各断面積を測定し, おのおのの性, 年齢, 体型による相違を検討するとともに, 筋を腹直筋, 側腹筋, 腰方形筋, 大腰筋, 脊柱起立筋, 横突棘筋に分け, 同様の検討を行った.研究対象は20歳代から70歳代の健康成人62名 (男性32, 女性30, 平均年齢49.3歳) で, 体型はローレル指数により, A, C, D3型に区分し検討を加え, 以下の結果を得た.1) 総: 断面積は男女とも20歳代が最も小で, 30歳代に増加, その後は70歳代まで大きな変化は見られなかった.一般に女性が男性よりも優る年代が多かった.2) 組織構成比は, 男性では腹腔と筋が34%前後でほぼ等しく, 皮下脂肪がこれらに次いだが, 女性では皮下脂肪と腹腔がそれぞれ34%前後で筋がこれに次いでいた.3) これらを年代別に見ると, 男性では20歳代と30歳代では筋が最も高く, 腹腔, 皮下脂肪の順にこれに次いだが, 40歳代からは腹腔, 筋, 皮下脂肪の順となり, 70歳代では筋と皮下脂肪とは等しかった.これに対して女性では20歳代から50歳代までは皮下脂肪が最も高く, その間20歳代では筋, 腹腟の順に, 30歳代以後では腹腔, 筋の順にこれに次ぎ, 60歳代と70歳代では腹腔が最も高くなる傾向が認められた.4) 各構成比の年齢的変化を見ると, 加齢的に皮下脂肪と腹腔は増加, 筋は減少の傾向が認められ, 男性では30歳代に著明であり, 女性では漸進的であった.また, 椎骨と椎孔は実際値において僅かながら加齢的に前者は増加, 後者は減少の傾向が認められた.5) 筋は男性では平均値は側腹筋, 脊柱起立筋, 大腰筋, 腰方形筋と横突棘筋, 腹直筋の順に大で, 加齢的減少は腹直筋と側腹筋は少なく, 大腰筋と腰方形筋は40歳代と70歳代に, 脊柱起立筋は50歳代に, 横突棘筋は70歳代にそれぞれ著しかった.女性ではおおよそ男性と同順であったが, 腰方形筋は腹直筋とほぼ等しく最も低かった.6) 体型別に見ると, 男性ではA体型では筋と腹腔が相等しくして最も大, C体型では腹腔, 筋の順に大, D体型では腹腔が最も大, 皮下脂肪と筋は等しかった.女性ではA体型は男性のD体型と同様で, C体型は腹腟と皮下脂肪が等しくて最も大, D体型は皮下脂肪, 腹腔, 筋の順であった.7) 男性では椎孔を除くすべての構成分はA, C, D体型の順に増加する傾向を示したが, 比率では皮下脂肪にのみ増加が認められた.女性では皮下脂肪の増加はA, C, D体型間に認められたが, 腹腔と筋はA, C体型の間にのみ差が認められ, 比率では体型順に皮下脂肪は増加, 筋は減少の傾向が認められた.

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