昭和医学会雑誌
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経穴および非経穴刺激鎮痛発現にあずかる視床下部弓状核ドーパミンシナプス伝達に対するβ-エンドルフィン, ACTHのシナプス前性作用
土屋 真弓武重 千冬
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1990 年 50 巻 2 号 p. 115-122

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抄録
経穴を低頻度刺激して出現する鎮痛 (AA) および鎮痛抑制系破壊後非経穴部を刺激して出現する鎮痛 (NAA) はともに下垂体の除去で出現しなくなる.下垂体がAAやNAAの発現にどのように関与するかを検索した.痛覚閾はラットの尾逃避反応により, 脳内への薬物の微量適用は挿入したカニューレを介して行った.AA発現の求心路の最終部は弓状核中央部 (M-HARN) であり, AAやNAAを最終的に発現させる下行性痛覚抑制系の起始部は弓状核後部 (P-HARN) が同定されている.P-HARNにドーパミン, β-エンドルフィン, ACTHを微量投与すると用量依存的に鎮痛が発現するが, M-HARNを局所破壊して1週間後, 同部が除神経された後は, ACTHおよびドーパミンによる鎮痛は影響を受けずに出現したが, β-エンドルフィンによる鎮痛は出現しなくなった.NAA発現の最終部としては視床下部前部 (NAA-AH) が見いだされていたが, 弓状核前部 (A-HARN) の破壊によりNAAおよびNAA-AHの刺激による鎮痛の発現は阻止され, また, 非経穴部およびNAA-AHの刺激によりA-HARNに誘発電位が出現したので, NAA発現の最終部としてA-HARNが同定された.なお非経穴部の刺激によるA-HARNの誘発電位はデキサメサゾンで拮抗された.A-HARNの除神経後は, ACTHによる鎮痛は出現しなくなったがドーパミン, β-エンドルフィンによる鎮痛は影響されなかった.経穴の刺激で正中隆起 (ME) に誘発電位が出現し, MEの局所破壊によってAAは出現しなくなったが, MEの電気刺激では鎮痛は出現しなかった.以上の結果より, AAおよびNAAそれぞれの求心路の最終部と, 鎮痛を最終的に発現する下行性痛覚抑制系の起始部のP-HARNとの閲にはドーパミンを伝達物質とするシナプス伝達があり, この伝達にM-HARNおよびA-HARNから正中隆起を経て下垂体に到る系により遊離されたβ-エンドルフィン, ACTHがシナプス前性に作用してドーパミンの遊離を促進し, P-HARNを活動してそれぞれAAおよびNAAを発現すると考えられる.
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