昭和医学会雑誌
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50 巻, 2 号
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  • 土屋 真弓, 武重 千冬
    1990 年 50 巻 2 号 p. 115-122
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    経穴を低頻度刺激して出現する鎮痛 (AA) および鎮痛抑制系破壊後非経穴部を刺激して出現する鎮痛 (NAA) はともに下垂体の除去で出現しなくなる.下垂体がAAやNAAの発現にどのように関与するかを検索した.痛覚閾はラットの尾逃避反応により, 脳内への薬物の微量適用は挿入したカニューレを介して行った.AA発現の求心路の最終部は弓状核中央部 (M-HARN) であり, AAやNAAを最終的に発現させる下行性痛覚抑制系の起始部は弓状核後部 (P-HARN) が同定されている.P-HARNにドーパミン, β-エンドルフィン, ACTHを微量投与すると用量依存的に鎮痛が発現するが, M-HARNを局所破壊して1週間後, 同部が除神経された後は, ACTHおよびドーパミンによる鎮痛は影響を受けずに出現したが, β-エンドルフィンによる鎮痛は出現しなくなった.NAA発現の最終部としては視床下部前部 (NAA-AH) が見いだされていたが, 弓状核前部 (A-HARN) の破壊によりNAAおよびNAA-AHの刺激による鎮痛の発現は阻止され, また, 非経穴部およびNAA-AHの刺激によりA-HARNに誘発電位が出現したので, NAA発現の最終部としてA-HARNが同定された.なお非経穴部の刺激によるA-HARNの誘発電位はデキサメサゾンで拮抗された.A-HARNの除神経後は, ACTHによる鎮痛は出現しなくなったがドーパミン, β-エンドルフィンによる鎮痛は影響されなかった.経穴の刺激で正中隆起 (ME) に誘発電位が出現し, MEの局所破壊によってAAは出現しなくなったが, MEの電気刺激では鎮痛は出現しなかった.以上の結果より, AAおよびNAAそれぞれの求心路の最終部と, 鎮痛を最終的に発現する下行性痛覚抑制系の起始部のP-HARNとの閲にはドーパミンを伝達物質とするシナプス伝達があり, この伝達にM-HARNおよびA-HARNから正中隆起を経て下垂体に到る系により遊離されたβ-エンドルフィン, ACTHがシナプス前性に作用してドーパミンの遊離を促進し, P-HARNを活動してそれぞれAAおよびNAAを発現すると考えられる.
  • 九島 巳樹
    1990 年 50 巻 2 号 p. 123-129
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    過去5年間の大学病院産婦人科外来患者の腟および頸管細胞診について, 疑陽性または陽性 (クラスIII~V) と判定された症例のうち, 扁平上皮系の細胞に異常のあるものを対象に組織診 (生検, 手術材料) との比較を行った.とくに, 疑陽性 (クラスIII) と判定された症例で, 両者の問に不一致があった場合には標本の見直しを行い, さらに手術材料について, 必要に応じて再切り出しを行って, 不一致の原因を検討した.対象とした214例のうち, 80症例 (37.4%) に細胞診と組織診の不一致がみられた.細胞診クラスIIIで, 組織診が正常範囲とされていた16症例では, そのうち8症例 (50%) に組織診を見直すことにより軽度異形成が発見され, 細胞診の見直しとともに組織診の見直しも必要であると考えられた.細胞診クラスIIIで, 組織診が上皮内癌を含む扁平上皮癌であった34症例では, 細胞診の標本が不適当であったもの5症例 (14.7%) , 細胞診の標本に組織病変に相当する細胞が, ごく少数しか存在しない, または認められなかったもの20症例 (58.8%) などが不一致の原因としてあげられ, 細胞診の読みが不十分であったと考えられるものは9症例 (26.5%) であった.細胞診標本に組織診に相当する細胞が認められなかった原因としては, 上皮内疵や微小浸潤癌の症例で, 病変部の広がりが, 子宮腟部全周の1/2以下であるような, 比較的小さい癌症例が多かったこと, 細胞診の再検査までの間隔が短すぎる症例があったこと (後述) , などが考えられるが, 臨床側の問題点として, 細胞採取方法が適切であったかどうか, 今後検討する必要があると思われた.細胞診の読みが不十分であったと考えられる症例については, 鏡検の際にダブルチェックの方法を取ったり, 症例検討の機会を増やすことなどにより, 細胞診の判定能力を向上させることが重要であると考えられた.以上をまとめると, 次の (1) ~ (3) となる. (1) 細胞診の適切な判定を可能にするため, 細胞の採取, 固定, 染色など標本作製段階でのより一層の注意が必要である. (2) 細胞診の読みをさらに向上させるために, 鏡検時のダブルチェックを含めた細胞診判定のシステムを確立することが重要である. (3) 組織診で細胞診に相当する病変がない場合には, 生検の見直し, および手術材料の再切り出しを含めた見直しが必要である,
  • 寺崎 雅子
    1990 年 50 巻 2 号 p. 130-141
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    耳鳴は日常診療においてしばしば遭遇する症状であるが, 客観的評価が困難であり, 治療効果の判定はさまざまで一定したものがないのが現状である.このため, 治療効果をより的確にとらえる方法として耳鳴患者に『耳鳴日記』を記入させ, キシロカイン静注法および星状神経節刺激法による耳鳴治療の経過を対比し, 直後効果および自覚的改善度の観察を試みた.すなわち本人の自覚的苦痛を基準とし, 耳鳴の大きさ, 性質, 耳鳴の精神的影響の自覚度を各段階に分類し, 一定時間毎に項目を記録させ, それをもとに治療効果の検討・判定を行った. (結果) 1.治療前に耳鳴が大きいという訴えは, 原因不明の感音難聴と突発性難聴の患者に多く認められた.また聴力型別には高音漸傾, 高音急墜など高音域障害のあるものに多かった.2.耳鳴治療直後の変化 (直後効果) は5つの型, すなわち, 一時減弱型, 減弱型, 不変型, 一時増強型, 増強型に分類することができた.3.原因疾患別に直後効果をみると, 原因不明の感音難聴にはキシロカイン静注法で有効率が高く, 一方内耳性難聴と推定される耳鳴にはキシロカイン静注法は有効であったが, 増悪する例も認められた.キシロカイン静注法ではほとんどすべての例で何等かの効果が見られたが, 星状神経節刺激法では特別な変化は認められなかった.4.聴力型と直後効果の分類との関係を見ると, キシロカイン静注群では高音漸傾型において一時減弱型+減弱型が86%以上で有効率が高かった.これに対して星状神経節刺激群では不変型が多く, 特定の効果は認められなかった.5.1クール治療後の自覚的改善度については, キシロカイン静注群の中で直後効果が有効であったものは改善率は高く, 無効であったものは悪化率が高かった.星状神経節刺激群では, 直後効果は不変型が多かったにもかかわらず, 針治療の累積効果が認められた.6.突発性難聴に起因する耳鳴ではキシロカイン静注法によって耳鳴が軽減するものと増悪するものとがあり, 耳閉感その他の異常反応を起こすものも認められた.以上から『耳鳴日記』の記載によって, 耳鳴は治療法, 原因疾患およびその病態に応じて, ある程度治療効果が予測できることが判り, 治療効果判定法としての意義が大きい事が明かにされた.
  • 渡辺 政信, 吉田 徹, 檜垣 昌夫, 吉田 英機, 今村 一男
    1990 年 50 巻 2 号 p. 142-148
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    精巣における性ステロイドホルモン生成分泌についてのin vitroにおける検討は数多くなされているが, in vivoにおける検討は少ない.そこでわれわれは未治療前立腺癌患者の去勢術の際に精巣静脈にカニューレを挿入し, 合成LH-RHを投与し, 合成LH-RH投与によるゴナドトロピンおよびステロイドホルモンの経時的変動と, 各ステロイド問の相互関係について検討した.症例はstage Dの未治療前立腺癌患者9例 (平均71歳) で, 去勢術施行前精巣静脈にカニューレを挿入し, LH-RH100μgの投与前と投与後5分, 15分, 30分, 60分, 90分および120分に採血した.ステロイドホルモンは遊離型のdehydroepiandrosterone (以下DHAと略す) , androstenediol (以下ADと略す) , testosterone (以下Tと略す) およびandrostenedione (以下△4Aと略す) と, 硫酸抱合型のDHA.S, AD-SおよびT-SをいずれもRIA法により測定した.推計学的処理はStudent's paired t-testにより行った.結果 (1) LH-RH投与後の精巣静脈血中のLHとFSHの経時的測定値は末梢静脈血中のそれらとほぼ等しかった. (2) 遊離型ステロイドの変動: LH-RH投与後5分でDHA, ADおよびT値は急速に上昇し, 投与前値に対し5分から120分まで有意な高値を示した.一方△4A値はLH-RH投与後上昇傾向を示したが有意でなく, 90分後の値に有意な高値がみられたのみであった.これら四者相互の相関関係についてみてみると, LH-RH投与30分以後においてTとAD, TとDHAおよびADとDHAに極めて高い正の相関を認めたのに対し, △4Aとの問には何ら相関を認めることはできなかった. (3) 硫酸抱合型ステロイドの変動T-S値およびAD-S値はLH-RH投与後120分まで投与前値に対し有意に高い値は認められなかったが, DHA-SはLH-RH投与後5分で有意の上昇を示した.これら三者相互の相関関係についてみると, AD-SとDHA-Sとの間にLH-RH投与5分以後120分まで正の相関を認めたのみであった.以上のことから, LH-RH投与によって上昇した内因性LHにより, ヒト精巣におけるステロイドホルモン生成分泌の充進が起きるが, 遊離型ステロイドホルモン相互の関係から, ヒト精巣におけるtestosteroneへの生成経路において△5-pathwayの方が△4-pathwayより優位に働いている可能性が強く示唆された.また硫酸抱合型ステロイドの中でDHA-Sは精巣においても分泌されることが示唆された.
  • ―精嚢造影を基準としたCT・US・MRIの評価―
    鳥居 毅, 渡辺 賀寿雄, 滝沢 弘之, 冨士 幸蔵, 片岡 肇一, 井上 克己, 斉藤 豊彦, 今村 一男, 宗近 宏次
    1990 年 50 巻 2 号 p. 149-155
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    前立腺癌の正確な病期診断は, 治療方針の決定に重要である.前立腺癌が最も浸潤をおこしやすいのは精嚢である.精嚢造影は, 精嚢体・排出管・射精管への前立腺癌浸潤が最も正確に描出できるので, この所見を基準とし, 精嚢造影後のX線CT (CT) ・経直腸的超音波検査 (US) ・核磁気共鳴 (MRI) による前立腺癌の精嚢浸潤の診断能を評価した.前立腺生検を施行し, 病理組織学的に前立腺癌の診断のついた29症例のうち, 精嚢造影が技術的に失敗であった5症例を除外し, 残りの24症例を対象とした.精嚢造影所見は, 癌浸潤を示す明らかな変形または陰影欠損を認めた場合を癌浸潤陽性像とした, 陽性とも陰性ともいえない判定困難な所見は“不確か”, とした.精嚢造影で, 精嚢に癌浸潤陽性像を認めた症例は8例あり, そのうちCTでは, 7例に癌浸潤陽性像を認めたが, USでは, 2例しか癌浸潤陽性像を認めなかった.精嚢造影で, 精嚢に癌浸潤陽性像を示し, MRIを施行した2例は, 癌浸潤陽性像を認めた.精嚢造影で, 精嚢に癌浸潤陰性像を示した症例は16例であり, CTではその全例が癌浸潤陰性像を示したが, USでは14例にしか癌浸潤陰性像を示さず, 2例は偽陽性像を呈した.精嚢造影で, 精嚢に癌浸潤陰性像を示し, MRIを施行した3例は, すべて癌浸潤陰性像を呈した.CT (精嚢造影後) はUSに比べ, 前立腺癌の精嚢浸潤の診断能は高く, USでは, 精嚢への癌浸潤の読み落としや読み過ぎの症例が多かった.MRIの精嚢への癌浸潤の診断能は高かったが, CTと比較するには症例不足であった.
  • 大田 桂一, 簡野 芳憲, 檜垣 昌夫, 今村 一男
    1990 年 50 巻 2 号 p. 156-162
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/11/19
    ジャーナル フリー
    前立腺癌は, 原発巣および遠隔転移巣の定量的な評価が難しく, 現在前立腺癌の治療効果を評価する確立された基準はない.今回われわれは, 前立腺癌取扱い規約に準拠して臨床効果判定基準を作成し, 当教室での症例によりこの判定基準の価値を検討した.その結果, 前立腺癌取扱い規約による臨床病期分類による評価では, stage A, Bにおける改善は6例, 不変は10例, 悪化は2例であり, stage Cにおける改善は3例, 不変は10例, 悪化は1例であり, また, stage Dについてはいずれも不変であった.しかしながら, われわれの臨床効果判定基準による評価では, stage A, Bにおける改善は9例, 不変は5例, 悪化は4例であり, stage Cにおける改善は4例, 不変は4例, 悪化は6例であり, また, stage Dにおける改善は9例, 不変は2例, 悪化は1例であった.以上より, 前立腺癌取扱い規約の臨床病期分類1) により評価した症例では, 多くの症例において不変例がみられた.その理由として, 前立腺痛取扱い規約の臨床病期分類では原発巣の変化を細かく評価することができず, その点われわれの作成した臨床効果判定基準は, これを補っており, 臨床的により有用であると思われた.
  • ―経直腸的超音波断層像とMRI画像との比較―
    吉田 徹, 滝沢 弘之, 渡辺 賀寿雄, 冨士 幸蔵, 片岡 肇一, 井上 克己, 田澤 和之, 簡野 芳憲, 斎藤 豊彦, 今村 一男, ...
    1990 年 50 巻 2 号 p. 163-170
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    最近, 超音波検査法は技術の向上にともない, かなり明確な診断が下せるようになり, 特に前立腺癌に関しては, スクリーニングによるstage分類だけでなく, その後の治療方針の決定および経過観察にかなり有用なものとなってきた.一方, 新たに登場してきたMRIは, 全く別の情報収集方法で, 特に前立腺癌の病期診断では重要視され始めた診断装置である.今回われわれは病理組織学的に前立腺癌と確定した18症例 (未治療症例9例, 既治療症例9例) を対象とし, (1) 椅子式経直腸的超音波装置Aloka SSD 520, ASU-ST, 7.0 MHzにより5mm間隔に膀胱より横断画像の描出, (2) MRI, 0.5テスラ, 東芝超電動MRI装置を用い, Tl強調画像は, gradient echo法 (TR=300msec: TE=14msec) , T2強調画像はspin echo法 (T=1800msecまたは2000msec, TE=80msecまたは100msec) にて横断面または前額断を中心にスライス幅5mmにての撮影, (3) 一部radical prostatectomyにて摘出された標本の病理組織学的所見をも用い, 前立腺癌の病期診断について, 超音波画像とMRI画像について比較検討したところ, 1) 前立腺癌の未治療症例では, 超音波ならびにMRIとも原発巣の存在およびその進展をよく描出している.しかし, 被膜の描出に関する情報は超音波の方が優れており, 前立腺と周囲臓器および脂肪組織との関連性に関しては, MRIの方が優れていた.2) 既治療症例では, 原発巣, 被膜の描出においては, MRIより超音波画像の方が優れていた.
  • 飯塚 隆, 森脇 康栄, 植田 俊彦, 小出 良平, 稲富 誠, 深道 義尚, 小口 勝司, 小林 真一, 安原 一
    1990 年 50 巻 2 号 p. 171-175
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    医学部薬理学実習において, 自律神経作働薬のヒトでの薬理作用を学習, 理解させることを目的として, 種々の薬物を点眼, 内服投与し, 眼圧, 調節力などを測定した.点眼では, 一側に1回点眼し, 対側は無処置とした.その結果, 特にepinephrine, dipivalyl epinephrine, timololでは点眼側のみならず対側の非点眼側にも眼圧降下を認めた.この結果より, これら自律神経作働薬には局所作用以外の作用機点がある可能性が考えられた.調節力は, アコモドポリレコーダー, およびアコモドメーターAA2000を用いて測定した.さらに散瞳の影響を検討するためピンホールを加え測定もした.その結果, pilocarpineにおいては調節力にはほとんど影響を認めなかった.また, tropicamideでは両者の測定値に約3Dの差が認められた.この差が生じた事は, 調節力の測定において自覚的な基準と他覚的な屈折力との間の差に関係あると思われる.ピンホールを加えた測定の結果では, ピンホールを加えなかった時に比べ約1Dの調節力の増加を認めた.
  • 夏川 周介, 塩川 章, 田代 浩二
    1990 年 50 巻 2 号 p. 176-186
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    農村地域における癌の特性を探る目的で, 典型的な農村地域に存在する病院と, 大都市に存在するほぼ同規模の病院において, 病理学的に診断された悪性腫瘍症例に関して臨床・病理・疫学的に比較検討を行った.全症例数は都市病院の方が約20%多いが, 臓器別にみると胃癌, 前立腺癌は農村病院が多く, 肺癌, 白血病および子宮癌は都市病院の方が多い.大腸癌, 乳癌, 卵巣癌および悪性リンパ腫においてはほとんど差がみられない.平均年齢は農村病院が明らかに高く, 人口構成における老齢化率の上昇が農村地域において際だっていることを反映している.このことは前立腺癌症例数あるいは胃癌における分化型 (高齢者型) の比率が農村病院に高いことによっても裏づけられる.しかし胃癌では早期癌の比率も農村病院の方が高いことは, 単に疾病構造の差のみならず検診・予防活動に対する施設の医療体制の相違が関与していると考えられた.環境的因子の影響がもっとも考えられる肺癌においては大気汚染, 喫煙状況などの疫学的差異が都市と農村において明らかであることが示唆された.近年増加の著しい大腸癌において両施設問に差がみられないことは食生活における地域差縮少と欧米化によるものと考えられる.全体的に確然とした差が認められないのは生活環境・習慣の地域差縮小が進んでいることを示唆するものであろう.
  • ― (第一編) 病像と社会適応の関係―
    井上 悟, 桜木 章司, 井口 喬, 田玉 逸男, 安部 康之, 出井 恒規, 大地 武
    1990 年 50 巻 2 号 p. 187-196
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    昭和大学付属烏山病院へ通院中の精神分裂病患者のうち, 5年以上外来通院を維持している183例を対象とした.臨床病像により症状消褪型 (124例) ・症状顕在型 (59例) の二型に分け, 陽性症状と陰性症状の相関, 社会適応度と陽性症状・陰性症状の相関, および社会適応経過について社会生物学的, 症状学的視点から調査, 検討した.陽性症状と陰性症状の相関分析からは, われわれの定義した陽性・陰性症状間に相互依存的関係が内在する可能性も推定された.社会適応度と精神症状の間には, 何れの病像にも, 強い順相関が認められた.また症状消褪型で陰性症状との間に強い1頂相関を示すが, 症状顕在型では陽性, 陰性症状とも同程度の弱い順相関にあった.ここで症状顕在型は, 陽性症状も陰性症状と同等に長期転帰と密接であることが分かった.また社会適応経過では, 症状顕在型に属する陰性症状優位型で, 漸進性に改善する一群を多数認め, この病像と「第二の屈曲」的現象の親和性が指摘された.
  • 片山 雄二
    1990 年 50 巻 2 号 p. 197-204
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    成人正常耳60耳を対象に, イヤシミュレータによる音圧を基準として外耳道内音圧と外耳道容積の測定を行った.全周波数において60耳の外耳道内音圧は, ほぼイヤシミュレータの基準値に近似した音圧が得られた.60耳の平均外耳道容積は1.34mlであり, 低い周波数帯域では外耳道容積の少ない耳は基準値より大きな音圧に, 容積の多い耳は小さな音圧に分布し負の相関傾向がみられた.また, 成人正常耳10耳, 外耳道形態異常耳 (鼓膜穿孔耳7耳, 中耳根本術後耳6耳) を対象にCCI-10を使用し, カナル型補聴器装用時の裸耳利得と挿入利得を測定した.裸耳利得では, 成人正常耳の周波数のピークは2828Hzで最大値16.9±3.7dBが得られ, 外耳道形態異常耳では, 周波数のピークは低い周波数帯城に移行した.挿入利得では, 中耳根本術後耳において1500~2000Hzで大きなdipを生じ成人正常耳と有意な差がみられた.中耳根本術後耳症例にカナル型補聴器を装用する場合には, 中音域の増幅を正常耳の場合よりも大きく補正する必要性があると推察された.
  • 根岸 雅夫, 小林 和夫, 井出 宏嗣, 高橋 昭三, 浜井 貴人
    1990 年 50 巻 2 号 p. 205-209
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
    47歳, 女性のRA患者がD-ペニシラミン療法を受けたところ, 著効を呈したが, 血清IgA値が, 0.5mg/dlにまで低下し, 易感染性も出現したため, 中止された.選択的IgA欠損症によく認められる種々の免疫学的異常を検討したが, 特記すべきものは得られなかった.しかし, 患者リンパ球と健常者リンパ球をそれぞれT細胞, B細胞に分離し, PWM下にcocultureしたところ, 患者T細胞との組合わせで, 原形質内IgA産生細胞の明らかな低下が見られた.著者らのこれらの実験と文献学的報告から, D-ペニシラミンはhelper T細胞を介して, 免疫学的に作用し, 稀に選択的IgA欠損症を誘起するものと考えられた.
  • 永尾 光一, 鬼塚 卓弥, 川瀬 紀夫, 太田 秀一, 杉山 喜彦, 風間 和男, 田代 浩二, 保田 尚邦, 伊藤 洋二, 小松 信男, ...
    1990 年 50 巻 2 号 p. 210-217
    発行日: 1990/04/28
    公開日: 2010/09/09
    ジャーナル フリー
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