昭和医学会雑誌
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前立腺癌の病期診断
―経直腸的超音波断層像とMRI画像との比較―
吉田 徹滝沢 弘之渡辺 賀寿雄冨士 幸蔵片岡 肇一井上 克己田澤 和之簡野 芳憲斎藤 豊彦今村 一男宗近 宏次
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1990 年 50 巻 2 号 p. 163-170

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抄録

最近, 超音波検査法は技術の向上にともない, かなり明確な診断が下せるようになり, 特に前立腺癌に関しては, スクリーニングによるstage分類だけでなく, その後の治療方針の決定および経過観察にかなり有用なものとなってきた.一方, 新たに登場してきたMRIは, 全く別の情報収集方法で, 特に前立腺癌の病期診断では重要視され始めた診断装置である.今回われわれは病理組織学的に前立腺癌と確定した18症例 (未治療症例9例, 既治療症例9例) を対象とし, (1) 椅子式経直腸的超音波装置Aloka SSD 520, ASU-ST, 7.0 MHzにより5mm間隔に膀胱より横断画像の描出, (2) MRI, 0.5テスラ, 東芝超電動MRI装置を用い, Tl強調画像は, gradient echo法 (TR=300msec: TE=14msec) , T2強調画像はspin echo法 (T=1800msecまたは2000msec, TE=80msecまたは100msec) にて横断面または前額断を中心にスライス幅5mmにての撮影, (3) 一部radical prostatectomyにて摘出された標本の病理組織学的所見をも用い, 前立腺癌の病期診断について, 超音波画像とMRI画像について比較検討したところ, 1) 前立腺癌の未治療症例では, 超音波ならびにMRIとも原発巣の存在およびその進展をよく描出している.しかし, 被膜の描出に関する情報は超音波の方が優れており, 前立腺と周囲臓器および脂肪組織との関連性に関しては, MRIの方が優れていた.2) 既治療症例では, 原発巣, 被膜の描出においては, MRIより超音波画像の方が優れていた.

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